セグウェイ開発者の、夢のような"発明生活" あの医療機器も彼の発明だった!

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高校生時代に、親の収入を上回る

ケーメンは、幼い頃から発明好きだったという。落ち着きがないために、学校の成績は決してよくなかった。物語を手にするよりは、昔の物理学の本をなめるように読む子供。高校生の頃には、プラネタリウムや博物館の装置の開発を任せられて、漫画家の父と教師だった母を合わせたよりも収入が多かったという。

工科大学へ進学したものの、自分の発明に没頭するあまり5年経っても卒業に必要な単位が取れず退学。だがそれ以降、発明家として幸せな人生を歩んでいるのだ。

ニューハンプシャー州には、自分で設計した八角形の家に住み、ヘリコプターで外出する。家の中には工作機械と共に、蒸気エンジンやジュークボックスなど、発明家が愛してやまないさまざまなモノが設置されているという。

ケーメンは今、次世代の科学者を育てる壮大なプロジェクトを続けている。「ファースト」と呼ばれる、中高生のためのロボット・コンテストだ。毎年、全米、いや世界中のチームが地元で闘い、決勝戦に勝ち進んでくる。参加する生徒は、総計100万人だ。

ファーストは、「科学者がセレブになるような社会を作りたい」と25年前に創設したものだったが、今や科学やロボットは、若者の間でもっともホットなテーマになった。ケーメンの先見の明の成せるわざだ。

ケーメンは未婚で、人生のすべてを発明に注ぎ込んでいる。「僕にとってのバケーションは、ひとつのプロジェクトから次のプロジェクトへ移ること」とか。発明のために生まれてきた、そんな人物がいるのだと納得させられる存在だ。
 

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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