ウェブ界の近未来を指し示す男の「嗅覚」 Web2.0の提唱者は次に何を見る?

✎ 1〜 ✎ 53 ✎ 54 ✎ 55 ✎ 最新
拡大
縮小

テクノロジー関係者でティム・オライリーの名前を知らない人物はいないだろう。

オライリーは、1977年に自分の名前を冠した出版社を創設した。サンフランシスコから北へ2時間ほども車を走らせた、のんびりした田舎町に、だ。

そのオライリー&アソシエーツ(後にオライリー・メディアに改称)が出版したのは、コンピュータ関連の解説本。コンピュータ・ハードウェアの関係者たちに向けたものだった。

だが、考えてもみてほしい。1970年代末といえば、インターネットはもちろんのこと、パーソナル・コンピュータが人々に知られていなかった時代。彼は、そんな時にコンピュータに特化した出版社を作ってしまったのだ。

ウェブ界の新しい潮流を見つけ出す嗅覚

写真:アフロ

だが、オライリーの先見の明は年月が経つに連れて次々と明らかになっていく。

たとえば、1992年に出版したインターネットの解説本『ホール・インターネット・ユーザーガイド&カタログ』は、100万部を超えるベストセラーになっただけでなく、いち早くインターネットとは何かというコンセプトを人々と共有した。

そのインターネットにウェブサイトのポータルを作り、そこにバナー広告を表示させるしくみも、オライリー&アソシエーツが最初に考案したものだ。これが、インターネット上で広く利用されたことはいうまでもない。

1990年代後半からはテクノロジー関連の会議も開催し始めたが、そのテーマの設定に関係者は舌をまいた。「オープンソース」「ウェブ2.0」「ロケーション技術」「電子書籍」「ビッグデータ」など。その時々でテクノロジーが可能にする次世代の風景を指差し、そこに人々を集めて知恵を交換し合うという場を設けたわけだ。

ロケーション技術や電子書籍のようにいったん定着してしまえば、その会議はなくなり、新たなテーマに刷新される。現在はIoT(インターネット・オブ・シングズ)やビットコイン技術といった新しいテーマが加わっている。

会議は、たいてい壇上でプレゼンテーションやスピーチをするセッションで構成される。それ以外にもワークショップのようなものもあり、新しい技術の学習の場にもなっている。何よりも、同じテーマに関心を持つテクノロジー関係者が集まり交流するところに、こうした会議の大きな意味がある。ここで行われた情報交換から、さらに新しいテクノロジーやビジネスが生まれているからだ。

次ページメイカームーブメントも生み出す
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT