最高益トヨタ、上り調子は揺るがないのか 円安効果を満喫し空前の利益水準

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このことから、為替影響を除けば利益の大きな伸びは期待できない。現状の為替水準が続く想定なら、年度平均では対ドルで多少の円安効果は見込めるものの、その寄与度は限られてくる。

これらを勘案すれば、営業利益2.9兆円から3兆円という予想が妥当なところだろう。もっとも、トヨタはいつも保守的なだけに、今年5月の期末決算時に出す2015年度の業績見通しは営業減益とする可能性も否定できない。

建設凍結の方針はどうなる?

トヨタは2016年3月末までの3年間、新工場の建設凍結を掲げている。世界的には販売鈍化で工場新設のひっ迫度は低いが、販売が伸びている米国市場はかなり需給がタイトで、米国工場はほぼフル稼働が続いている。メキシコ工場計画の検討が進んでおり、凍結方針は若干緩められているという声もある。が、4日の決算会見後、小西工己常務役員は「2016年3月までは(工場新設は)凍結します」とあらためて強調した。

金融政策では今年中の利上げを予想する向きもあり、米国市場も先行き不透明であることを考えれば、既存工場の能力増強を優先する姿勢は妥当ともいえる。3兆円に迫る利益を上げながら、さらに上を求められるトヨタ。外野の声に惑わされず、当面は基盤固めを優先する考えのようだ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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