コストコと対照的なのは、3万点の品揃えを自慢にする日本の某大型スーパー。また、某家電量販店では150万点の取り扱いをうたっている。本当なのかと疑ってしまうぐらいだ。コストコと比べてわかりやすいのは、コンビニエンスストア。だいたい商品数は3000~3500点ぐらいといわれる。店舗の大きさはまったく違うのにコストコとコンビニの商品点数には大差がない。
流通業界では「品ぞろえの多さは、お客へのアピールになり、売り上げ増につながる」といわれる。筆者もその考えを完全に否定しないが、コストコが商品点数を絞り、お客に選択肢を与えないことで成功したモデルを確立しているのは事実だ。
商品数の多さがもたらす弊害
筆者は調達コンサルタントをしている経験から、商品数が増えると在庫管理が煩雑になったり、廃棄のコストもかかったりすることを指摘したい。お客の声を聞くだけでは点数は膨らむいっぽうだ。もちろん品揃えが少なすぎてもダメ。そのバランスをうまく取れば、売り上げと顧客満足度を最大化できる。コストコの大胆な商品点数の圧縮には学ぶところがある。
【 カラクリ 3 】 現金回収が圧倒的に速い
広告宣伝におカネをほとんど使わないのもコストコのビジネスモデルの特徴だ。口コミやメディアからの評価などで新規客やリピーターを獲得していっている。
当たり前の話ながら広告宣伝は先におカネを払い、後で売り上げとしての効果を刈り取る。ただ、その効果がすぐに出ればいいが、最悪は出ないかもしれず、また回収までに時間がかかるかもしれない。もちろんイメージ広告は、中長期的に効果を狙うものだが、たとえば商品の仕入れを考えてみるとおカネを払ったあとは、なるべく早く代金を回収できるにこしたことはない。
つまり、商品が売れるスピードが早いほど企業経営はラクになる。これを、経営用語ではキャッシュコンバージョンサイクル(CCC)と呼ぶ。ここでは簡易的な説明に留めるものの、このキャッシュコンバージョンサイクルが長いほど企業が現金回収に時間がかかっていることを指す。少なければ現金回収に時間はかかっていないし、マイナスならば売る前に現金を得ていることになる。
このコストコのキャッシュコンバージョンサイクルは4日。小売業の平均は30日と言われるので、コストコはズバ抜けて早い。ウォルマートも早いほうだと言われるがそれでも2週間だ。
コストコが仕入れた商品は1カ月で売れる
コストコの在庫回転率は11.64。棚卸資産(在庫)と販売された商品の原価を比べて、在庫商品が年間に何回転したかを示す指標だ。つまり、コストコの場合は仕入れた商品が1カ月くらいで売れることを指す。アイテム数を減らし、集約したうえで販売するため、現金回収を迅速にすることで経営基盤を固めている。
これら3つの利点は、うまくいっている現状を評価したにすぎない。しかし、コストコのビジネスモデルに学ぶことは多い。少なくとも安い商品やサービスを売りっぱなしにせず、商品やサービスのラインナップをいたずらに増やさないことで、企業が得られることは少なくない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら