ウォルマート、ZARAが食らった事件の教訓 米国で続いたクレームは対岸の火事ではない

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(写真:ロイター/アフロ)

2014年にアメリカの小売業を舞台として、いくつかの大事件が起こった。日本語で報道されていないため、多くの日本人がその存在すら把握していないが、今後、日本でも同様のことが起こりうる。3つの事例を紹介しよう。

射殺された学生を侮辱したスウェット販売

アーバンアウトフィッターズ(Urban Outfitters)はアメリカのファッションブランド。カジュアルでセンスの良い男女に人気があるアパレルメーカーだ。物議を醸したのは、同社が発表したケント州立大学(Kent State University)のスウェット。ケント州立大学の関係者が驚愕し、大騒ぎになった。アーバンアウトフィッターズはすぐさまケント州立大学の関係者に謝罪した。2014年9月のことである。

なぜこのスウェットが問題になったかというと、血にまみれたデザインだったからだ。「太陽柄のデザインと思った」と釈明している小売店もあるものの、素直に見れば血痕や流血としかいえない。同大学が驚愕し、そして怒りに震えた理由は、1970年に起きた事件にある。同大学ではベトナム戦争に反対する学生らが州兵から発砲され4人が射殺された。非武装の学生らが死亡したこの事件は同大学に刻まれた悪しき思い出となっている。この事件をアーバンアウトフィッターズは、商業主義的に蒸し返してしまった。

ケント州立大学は、悲しみをみずからの宣伝と利益のために使われた、とアーバンアウトフィッターズに対して抗議。アーバンアウトフィッターズはすぐさま撤収した(その後オークションサイト「eBay(イーベイ)」に500ドルで登場した)。なお、これら一連の事件は検索エンジンで「Urban Outfitters」「Kent State University」と入力すればいくらでも出てくる。

同じく日本ではほとんど報じられていないが、子供服ブランドの「ZARA」(ザラ)をめぐっても事件が起きた。子供服のデザインが旧ドイツ軍ナチ強制収容所の服と似ていると批判され回収を迫られたのである。

筆者の初見ではそれはわからなかったが、いくつかのナチ強制収容所の画像を見ると、確かに類似しているように感じた。日本では、あまり衣料デザインが政治的あるいは歴史的な観点にさらされるケースは少ないものの、これからグローバル化が進む中、日本企業としても気をつけておきたい。この事件も「Zara」「Nazi」とネットで検索すれば出てくる。

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