「貧乏エリート」は円安が大チャンスだと思えない 財務省・学者・メディアの歪んだ「円高好き」

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だが、問うてみたい。日本の国力が低下しているのだとしたら、為替レートは円高のほうがいいのか、円安のほうがいいのか?

確かに消費者にとって一時の購買力は円高のほうがいいかもしれないが、数年単位で見た経済活動は円安のほうがマシのはずだ。

年初のドル円レートは1ドル=約115円だった。輸入が必要な資源価格が暴騰する逆風の環境で、かつコロナからの影響が十分に回復していない状態にあって、1ドル=100円の円高になるのと、130円の円安になるのと、どちらが良かっただろうか。「為替レートの急変には弊害があるが、総合的には円安のほうがプラスだ」という日銀の黒田東彦総裁の考えが正しいのではないだろうか。

日本の競争力が衰えて、貿易赤字だけの現状から、経常収支まで赤字になることを心配する人にも問うておこう。貿易収支や経常収支を長期的に黒字にするには、円高がいいのか、円安がいいのか? 少なくとも高校の社会科の教科書を読んだことのある人なら答えは明らかだろう。

「貧乏エリート」の利害と心理とは?

筆者は、現在のような経済状況にあって、日銀の利上げによる円高を望んだり、財政再建を旗印に増税を企てたり、こうした「緊縮政策」の提灯を持ったりする、官僚、学者、マスコミなどの人々を「貧乏エリート」と呼ぶことにしている。

影響力のある貧乏エリートは、年収で言うと1500万円から2000万円くらい(官僚だと局長級。学者やマスコミも)になるので、社会全体の相対比較で言うと「貧乏」というよりも「豊か」なのだが、彼らの日本経済全体の繁栄を嫌う心根に対して「貧乏」だと言いたい。「貧乏神」などと言うときの「貧乏」だ。

官僚、学者、マスコミの緊縮好きの人々は、円高で不況になったり、利上げで資産価格が下がったりしても、自分の収入は殆ど変わらない。加えて、雇用が安定した人々だ。

彼らの価値観の根底には、自らの「相対的な社会的地位」(経済力と社会に対する影響力、ステイタスなどの総合評価)を高く保ちたいとする欲望があるように思われる。

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