1億円積まれても冷蔵庫は絶対に使わない理由 「ご先祖様からの知恵」の圧倒的合理性に学ぶ

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最もカンタンなのは「干す」ことであろう。ほとんどの野菜は干すことができる。これはもう万能の保存方法である。結局、水分がなくなればものは腐らないのだということを私は思い知った。

逆に言えば、水分があると、時間が経てばものは腐る。だから冷蔵庫の野菜室には案外腐った野菜がいっぱいなのだ。自らの水分で自らを腐らせてしまうのである。

それがですよ、冷蔵庫に入れる代わりにベランダのザルなどに野菜をポンと置いておくというただそれだけで、雨に打たれない限りすべてはただただ萎びてくる。つまりはどんどん乾いていく。つまりは時が経つほど「腐敗」は遠ざかっていくのである。ってことは、時間が経つほど保存性はどんどん高まるのである。

「干す」と「漬ける」は栄養価も高める

いやー、これだけでも軍配は圧倒的に「干す」に上がるというものだ。

さらにそれだけではない。干すということは太陽の光にジリジリとあぶられているということで、言い換えれば太陽が半分火を通してくれるのだ。なので干した野菜は、煮ても焼いても揚げても調理時間が非常に短くて済むのである。

つまりは太陽が料理の下ごしらえをしてくれるのであります。冷蔵庫はそんなことはまったくしてくれない。この点においても「干す」の圧勝である。

冷蔵庫って、よくよく考えれば温度を下げることで腐敗菌の増殖を抑える装置、つまりは「ゆっくりとものを腐らせる装置」に過ぎないわけですよ。あれだけのでかい図体でエネルギーもバカスカ食うわりには、なんとも不器用というか、案外使えない奴である。ちょっとかわいそうになるくらいである。

そして「漬ける」。これもほぼ万能の保存方法と言って良い。最も手軽なのはぬか床を持つことで、ここに年中季節の野菜を放り込んでおけば、あとはぬか床様が「ぬか漬け」という立派な料理を完成してくださるという奇跡の装置である。

これも、ぬか床にさえ入れておけば「腐る」ということはないので(いつの間にか消えちゃうことはあるが)、保存という点においても、またぬか床様自身が調理までしてくださるという点においても、まったくもって冷蔵庫とは比べ物にならない優れた装置である。

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