タカラトミー、ファンドも手を引く内憂外患 定番商品が売れない、海外も芽が出ず

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「リカちゃん」「トミカ」に肩を並べる、新たなブランドが生まれてこないのも悩み(撮影:尾形文繁)

「グローバル化で一定の成果が出ました」。

2014年12月3日。タカラトミーは米投資ファンドのTPGとの資本提携を解消すると発表した。TPGが保有する4%強の株を約29億円で取得、74億円の転換社債型新株予約権付社債(CB)も買い取ったうえで消却した。

タカラトミーは2007年に富山幹太郎社長の主導で、グローバル化を目的にTPGと提携。役員2人を受け入れて、ベトナムで生産拠点を立ち上げた。その後2011年には米玩具メーカー、RC2コーポレーション(現トミーインターナショナル、以下TI)の買収にも乗り出した。だがグローバル化で成果が出たとは言いがたい。提携解消により、TPGにとって、投資は“損切り”に終わった。2007年に1株714円で取得したタカラトミー株を659円で売却。CBも転換価格770円を上回らなかったからだ。

振り返ると、トミーとタカラが経営統合し、タカラトミーが発足したのが2006年。2010年3月期に最高益を更新したが、その後は迷走が続く。局面打開を図った、相次ぐファンドとの提携も不発に終わり、2013年3月期は統合後、初めて最終赤字71億円に転落。今期も赤字に沈む見通しだ。

「妖怪」のせいではない

タカラトミーの稼ぎ頭といえば、ご存じ、「トミカ」「リカちゃん」「プラレール」だ。しかし目下、この定番の前には、バンダイの「妖怪ウォッチ」という、強烈な逆風が吹き荒れている。小学生男児を中心に、今や「妖怪」は社会的ブーム。もっとも推移を見るかぎり、妖怪ウォッチとは関係なく、タカラトミーの苦戦は明らかである。自社ブランドで構成される単体売上高は、2010年3月期の757億円から、2014年3月期は541億円まで一気に縮小。大きな要因はヒット商品不在だ。「ベイブレード」ブームが去った後、次のトレンドを生み出せていない。

これには「海外に力を入れて国内が手薄になっていた」(元幹部)ことも見逃せない。だが、海外も不振で、2011年に約520億円を投じて買収、欧米で玩具事業を展開するTIは赤字。2013年はCEOを交代させて、本社から日本人幹部を送り込みテコ入れ中だ。もともとTI買収を持ちかけたのはTPGだった。「タカラトミーの株価が上がらず、何とか現状を打破しようとしていた」(前出の元幹部)。その買収提案に、タカラトミーの役員はこぞって反対したが、富山社長だけは違った。「親父を超えたい。米国にトミーの旗を立てたい」。説得に動じることはなく、最後は周りが折れた。

が、米国での玩具事業は、勝手がまるで違っていた。現地のウォルマートやトイザらスと、1年半前から商談し、仕入れてもらう商品を開発しなければならない。日本流のテレビCMを使ったマーケティングも通じず、買収後に挑んだ年末商戦は大苦戦。さらには、TIの取扱商品に関する宣伝広告の案内を一方的にFAXで送り付けられたとして、特定の顧客が集団訴訟を提起。2014年8月には和解金10億円という“高い授業料”を支払っている。欧米だけではない。並行して力を入れた中国進出でも、軌道修正を余儀なくされた。TIの扱うベビー用品は中国市場でも振るわず、2013年には一部撤退を決定。結局、定番のほか、「ポケットモンスター」関連商品へと、大幅に絞り込まざるをえなくなった。

ちなみにタカラトミーは2009年、丸の内キャピタルとも資本提携している。三菱商事子会社の丸の内キャピタルと、中国進出でシナジーを狙ったためだ。ただこちらも目立った結果は出ず、またもファンドに振り回された。

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