岩田社長が復活、任天堂の成長シナリオは? 3DSと健康関連で本格回復できるのか
「お盆明け以降は出社して業務を再開しており、現在では通常の業務に復帰しております。ご心配をおかけしました」。
10月30日、任天堂の岩田聡社長は経営方針説明会の冒頭でこう発言し、頭を深く下げた。胆管に腫瘍が見つかったことで、6月に手術をした岩田社長がマスコミの前に登場したのは、5月の決算発表以来となる。29日に大阪証券取引所で決算説明会を行い、翌30日には東京都内で経営方針説明会の壇上に立った岩田社長。以前より痩せた印象ながら、終始明るい様子で説明にあたった。
岩田社長の表情が明るく見えたのは、業績の結果なのかもしれない。2014年4~9月期の売上高は前年同期比12.8%減の1713億円と続落したが、前期の営業赤字232億円から、今期は営業赤字2.1億円へと急縮小。営業外の為替差益が増えたこともあり、経常利益は221億円(前期12億円)、最終利益は143億円(同6億円)と大幅に改善した。
携帯型ゲーム機の「ニンテンドー3DS」はハード・ソフトともに販売数量は減少したが、据え置き型ゲーム機「WiiU」が販売台数112万台となり、前年同期の46万台から大きく伸ばした。これは5月末に発売した「マリオカート8」の影響が大きい。年末商戦では任天堂キャラクターが勢揃いする、人気格闘ゲーム「大乱闘スマッシュブラザーズ(スマブラ)」の発売を控えており、一定の需要が見込めそうだ。
苦戦した3DSも何とか挽回
滑り出しが苦戦した3DSも、10月に「Newニンテンドー3DS」を発売したことで、「踊り場を抜け出し、今期後半に販売を挽回する」(岩田社長)。9月に発売した3DS向けのスマブラが320万本超を売り上げ、10月に発売したカプコンの「モンスターハンター4G」が230万本を突破するなど、人気ソフトが相次いでいる。年末にかけてはレベルファイブの「妖怪ウォッチ2真打」が発売されるほか、任天堂が期待を寄せるのが、11月に発売される「ポケットモンスター オメガルビー/アルファサファイア(ポケモンルビサファ)」だ。
今回の説明会で岩田社長の口からは、”スマブラ・ルビサファ同世代仮説”なる言葉が飛び出した。2001年に発売された家庭用ゲーム機「ゲームキューブ」向けの「スマブラDX」や、02年に発売された携帯ゲーム機「ゲームボーイアドバンス」向けのポケモンルビサファについて、小学生時代に遊んだ世代が18~25歳となっている。「3DS版スマブラの初動を支えてくれたのはこの世代。日本では3DS版スマブラの購入者の3割がこの層で、欧米では5割に達しており、ポケモンルビサファの予約状況の好調につながっている」(岩田社長)。18~25歳はソーシャルメディアを活用している世代でもあり、スマホに時間やおカネを費やす人も少なくない。「この世代の潜在需要を開拓することが、年末商戦では重要になる」(岩田社長)。
本来ならば年内にリリース予定だったスマホ向けアプリも、年末商戦はスマブラとポケモンに集中するため、来年へ後ろ倒ししたほど。スマホ向けアプリは「Mii(ミー)」と呼ばれる任天堂のゲーム内に存在するプレイヤーの分身キャラクターを活用する方針だ。「年内に中途半端に出すより、磨いて出そうかと思っている」(岩田社長)と自信をのぞかせた。
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