マネタイゼーションの懸念くすぶる米FRB

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GSEのファニーメイとフレディマックは、リーマンショック後の危機のさなかに、事実上国有化され、住宅価格の値下がりによる損失を政府が補填し続ける形となっている。すでに損失は2社合計の累計で1600億ドル余り。資産規模は合計で5・8兆ドルに上る。ガイトナー財務長官が13年までは資本不足の補填をコミットしており、これが投資家にとっては事実上の保証。今年から来年にかけて、どのような処理の方針が出されるのか、注目されている。

野村総合研究所の井上氏は、「公的資金の垂れ流しを続けるわけにはいかないが、抜本処理も無理。まとまった資本増強をしつつ、業務範囲縮小などの付帯条件を付けるのが落としどころだろうが、議会の試算ではそれでも最大4000億ドルが必要」とする。同時に、連邦政府の借り入れ限度をめぐる議論で財政健全化に焦点が合わせられ、外国人投資家の米国債への注目が高まる中では、「QE2が、国債市場の安定維持という別の目的で使われるリスクも考えておくべき」と井上氏は見る。

金融危機という異常事態の中で、独立した機関である中央銀行が議会の議決を経ずに、AIGを救済し、大手投資銀行に低コストで流動性を供給し、事実上の収益補填を行ったことは、民主主義にもとる事態として、大きな批判を浴びている。その一方で、緊急事態で、当時はやむをえなかったこと、という認識が一般的であり、米FRBは先般、事後的に、金融危機時に創設された流動性と信用供与のプログラムの実績を公表している。

しかし、東京大学の岩本康志教授は、「金融危機の下で金融政策が政治化してしまったことが、中央銀行の独立性を脅かし、正常な手段としての金融政策の運営に支障を来すおそれがある」と指摘している。財政面からの要請でFRBがQE2をやめられないという結果になれば、まさにそういうことになる。

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