マネタイゼーションの懸念くすぶる米FRB

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これは景気の回復による良い金利上昇ばかりでなく、ブッシュ減税の延長による財政悪化を懸念した悪い金利上昇も織り込まれているとみられている。民主党の弱者保護的な政策のもと、財政再建は進まないとの見方も強い。

市場の関心は早くも6月末に移っている。基本的には、QE2は6月末で終了、ないしは大幅に縮小されるとの見方が多い。何よりも、景気がシッカリしている。共和党はFRBがインフレをつくり出していると攻撃している。

ニューヨークの富裕層は別にして、地方では緊縮財政による教育費の上昇、ガソリン、食料価格の上昇で、インフレで苦しいというのが生活実感だからだ。新興国からは、バブルを醸成しドル安にしているという批判もある。それに、金融関係者からのマネタイゼーション批判。

しかし、米国の金融市場や当局の動きに詳しい野村総合研究所の井上哲也主席研究員は、「雇用の低迷から賃金が下がることを懸念するバーナンキ議長のディスインフレ論が、市場の見方とはかみ合っていない」とし、また、「GSE(住宅金融公社)処理の影響を含め、財政面の要請からやめにくくなるリスクもある」と指摘する。

FRBは物価の安定とともに、雇用の最大化も使命としている(二重の使命)。雇用状況は改善しつつあるとはいえ、失業率は9・4%とまだ高水準で、簡単には下がらない。その一方で、バーナンキ議長も、「失業期間の長期化や非正規雇用労働者が増えていることにより、スキルが失われている」との懸念を表明している。

雇用のミスマッチが拡大しているとの指摘も多い。つまり自然失業率がこれまで考えられていた5・5%程度から上がっているとすれば、失業率が大きく改善しないうちに賃金上昇が始まるかもしれない。雇用の最大化を目指す金融政策にはこうした難しさもある。

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