北朝鮮、表面化した台湾との親密な経済関係 「敵の敵は味方」を地で行く実利外交

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2015年の年明けを祝う平壌市民の様子(写真:AP/アフロ)

ソニーの米国子会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメント社(SPE)へのハッキング行為を「北朝鮮の犯罪」と断定し、その報復として北朝鮮への経済制裁を行った米国政府。北朝鮮はこれまでも、核実験やミサイル発射などで国連を中心とする世界的な経済制裁を受け続けている。

ただ、すでに10年近くなる経済制裁にもかかわらず、北朝鮮経済は2010年代に入ってから徐々に回復、首都・平壌を中心に高層建築物が建ち並び、商業施設には多くの商品が並ぶようになった。

また、餓死者を出した最悪の食糧難を経て、この数年間は徐々に食糧生産量も自給できるほどの水準にまで達し、外国製の加工品の輸入も増加しているとの指摘も少なくはない。米国をはじめ国際社会からすれば、経済制裁の効果が疑われる現象が起きている。さまざまな抜け道がある、ということだ。

それは、北朝鮮の貿易総額で8割近くを占める中国の存在が大きい。北朝鮮も一国に偏る経済構造をよしとは思っておらず、対外貿易の多角化を推し進めている。その相手の一つに、中国と対立する台湾がある。これまで、台湾と北朝鮮との経済的関係が声高に叫ばれたことはないが、実際には「敵の敵は味方」を地で行くような関係が北朝鮮と台湾の関係にあるようだ。

台湾企業による北への不正輸出は氷山の一角

2014年の暮れも押し迫った12月29日、米国で一つのニュースが流れた。米イリノイ州北部地方裁判所が同日、「台湾人企業家が北朝鮮への精密機械輸出容疑を認めた」と明らかにしたのだ。

米国の公共放送RFA(自由アジア放送)によれば、容疑を認めたのは蔡岳勲氏。蔡氏は父である蔡謙泰氏とともに、米国と台湾で少なくとも3つの貿易会社を運営し、北朝鮮と不法な取引をしてきたという。

蔡氏親子は、ロケット部品など武器製造に使用可能な精密機械を買い入れ、密かに北朝鮮に搬入しようとした容疑で2013年に逮捕された。この精密機械は米国の重装備機械メーカー・ブライアント社が製造する「正孔中心研磨機」と呼ばれるもの、とRFAは伝えている。

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