2015年の日本株は、日経平均だけを見るな ジワリ改革が進む日本、捨てたもんじゃない

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渋澤 私は不安定期に入ったと見ています。利益を上げられる企業と、そうでない企業との格差が広がっていくのではないでしょうか。

中野 気になるのは債券市場の動きです。ユーロ圏を見ても、ドイツもイタリアもスペイン、フランスも、金利差が縮小してきました。余剰資金が債券市場に流れ込んでいます。ここまで債券価格が上昇すると、そのバブルが弾けた時の反動が気になります。こんな超低金利は未知の世界です。ところが、そのなかで株式市場には割高感がありません。

渋澤 その意味では、実は優良企業の株式こそが一番の安全資産になる可能性がありますね。その意味で、株式市場に関しては、それほど悲観的になる必要はないかも知れません。

「個人」と「企業」、2匹の穴熊を撃つ連続攻撃が始まった

藤野 私も2015年の株式市場に関しては、それほど悲観してはいません。ただ、2013年、2014年は、それなりに株価が上昇したので、ここからさらに何割も大きく上昇は期待できないでしょう。つまり、「指数でどれだけ上昇するか」、というよりも「個別企業を選別して投資する」という流れが一段と強まっていくのではないでしょうか。そのカギを握っているのは資本市場との対話です。

中野 伊藤レポートですね。

藤野 そう。これに関しては穴熊の話に喩えて説明するのですが、日本には2匹の穴熊がいるのですよ。1匹は約870兆円を抱えている「個人」という穴熊。もう1匹は300兆円のキャッシュを抱えている「企業」という穴熊です。

合計で1200兆円近い資金がノンパフォーミングアセットに滞留している。この状態は「ヤバイ」だろうということは、自民党も日銀も、経産省も解っている。この部分の回転を高めなければならないのです。

個人投資家にコツコツ投資を説く「草食投資隊」の地道な活動が、いま実り始めている(左からセゾン投信社長中野晴啓さん、コモンズ投信会長渋澤健さん、レオス・キャピタルワークスCIO藤野英人さん)

そこで「黒田バズーカ」が登場して、穴熊の穴に火を点けた。でも、個人という穴熊の中には、合理的な決断が下せず、動き出さない人が大勢いる。そこで、より合理的に動くと思われる企業という穴熊に目をつけ、まず穴熊を狩るキツネにどんどん動いてもらうようにするため、機関投資家の環境整備を図ったわけです。

つまり、スチュワードシップコードやコーポレートガバナンスコードが登場し、ROE経営が重視されるようになった。確定拠出年金やNISAなど、長期投資のための環境整備も充実してきた。長期投資に向けた連続攻撃が有効に作用すれば、日本の株式市場の環境は、2015年も決して悪くはないでしょう。

渋澤 まさに、これまで草食投資隊の言い続けてきたことが、国策になってきたわけですね。草食系かもしれないですが、キツネには負けられません!小動物からゾウやキリンやカバという大きな存在にならないと。ということで、2015年も草食投資隊をよろしくお願いします。

草食投資隊 渋澤 健、中野晴啓、藤野英人

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そうしょくとうしたい

コモンズ投信会長・渋澤 健、セゾン投信社長・中野晴啓、レオス・キャピタルワークス社長CIOの藤野英人の3氏で結成。根底には、「長期投資を根づかせたい」という3人の熱い思いがある。「草食投資隊」という名前は、投資=肉食系というイメージが一見つきまとうが、本質は違うのではないか、という3人の共通の考えによる。

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