ヤバすぎる!「培養肉ハンバーグ」の衝撃 肉の生産も消費も、根本から変わる

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こうした技術革新によって、今後どのようなことが起こるのだろうか。業界変革を予測するためには、ニュースを見て、聞いて、ただ驚き、感心するだけでは不十分である。見聞きした技術革新が世の中の「当たり前」になった時、誰が影響を受けて、世界がどう変わり得るのか、自分の頭で筋道を立てて予測する必要がある。

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培養肉を開発したマーク・ポスト氏

培養肉は一部のベジタリアンからも支持されている。家畜を殺す必要がないからだ。家畜から幹細胞を採取して、培養すれば、必要な食肉が出来てしまう。

現段階で味はともかく、食感は肉そのものであり、この培養肉を生み出すコストが、一般的な食肉を製造するコストより下がれば、経済的にも、(家畜を殺さないという意味で)倫理的にも培養肉を当たり前に消費する時代が来るかもしれない。価格競争が激しい外食企業でも、培養肉を扱い、牧場産の自然肉を使わなくなる可能性がある。

「そんなことは有り得ない」と思われた方は、成型肉を考えて欲しい。成型肉は細かいクズ肉やそのままでは販売できない内臓肉を軟化剤で柔らかくして食品添加物で固め、形状を整えた食肉である。激安の焼肉屋チェーンやステーキ屋チェーンでは当たり前のように使われているものだ。また、子どもに人気の高い「ミートボール」はどうだろうか。すべてとは言わないが、多くの商品が本来なら産業廃棄物となるべきクズ肉に、添加物20~30種類ほど大量に投入して固めて加工したものだ。これら成型肉やミートボールと比べれば、「培養肉」を一概に否定することは出来ないだろう。

畜産「バイオ工場」が続々と誕生?

それでは、培養肉が与える影響について考えてみたい。

培養肉の技術は、まず畜産業界に大きな変化を与える可能性がある。畜産業の「家畜を育てて出荷する」というビジネスモデルを根底から揺るがしかねないからだ。一方で、培養肉を毛嫌いする人々や本物の肉を好む人も当然にして残る。既存の畜産業の縮小は避けられないが、培養肉と差別化できるほどの品質を保てるプレーヤーは生き残ることができるだろう。

また畜産農家を代替するプレーヤーとして、実験室のような畜産「バイオ工場」が出てくる可能性もある。そこで働いているのは技術者であり、現在の畜産農家とは性質が異なる。日本においては、外食産業・食品業界と畜産業界の間には、独特の商慣習があり、その長期的な付き合いや信頼関係が強みにもなっている。

が、培養肉の使用が当たり前になると、そのルールが崩れる。外食産業や食品業界の成功要因はそういった「繋がり」ではなく、「いかに優秀な技術者を集められるか」になるかもしれない。もはやオールドタイプの業界ではなく、バイオテクノロジーを駆使するニュータイプの業界に変貌を遂げる。

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