スマニューに転身、ミクシィ経営幹部の変心 新事業創出を担う最高事業責任者が辞任

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川崎氏の後任について公表していないが、「新規事業については、(創業者である)笠原健治を中心に取締役全員で進めて行く」(ミクシィ)という。

2013年に社長から代表権のない会長に退いた笠原氏は、その後も新規事業の創出に携わってきた。今回の事態を受けて、川崎氏が統括してきたイノベーションセンターも、笠原氏が中心となって見ていく方針だ。従来からのmixi事業と大ヒット中のスマートフォンゲーム「モンスターストライク」については、森田仁基社長が見る体制に変わりはないという。

振り返ると、川崎氏が執行役員として入社した2013年1月当時、ミクシィは業績低迷に苦しんでいた。2012年には経営幹部の離脱が相次いだだけに、社長交代をはじめとする川崎氏ら新たな経営陣の手腕に期待が寄せられたのは想像に難くない。

モンスト大ヒットで様変わり

川崎氏というキーマンが抜けた”穴”をどう埋めるか(撮影:梅谷秀司)

状況が好転し始めたのは2013年12月からだ。スマホゲームのモンストがヒットし、今やガンホー・オンラインエンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」と並ぶ大人気ゲームとなった。現在は北米、台湾、韓国、中国でも配信を開始し、世界累計利用者数は2000万人。2014年3月期は売上高121億円、営業利益4・8億円だったが、2015年3月期の見通しは売上高1000億円、営業益450億円と爆発的な成長を見せている。

 しかしスマホゲームに浮き沈みの激しさはつきものだ。今のところ、ミクシィはモンストに次ぐゲーム開発のパイプラインを持ち合わせていない。「モンストで手にしたキャッシュは、ネット業界のM&Aに活用したい」(ミクシィの荻野泰弘取締役)としているが、これほどの大ヒットに肩を並べる新事業を生み出すのは容易ではないだろう。

1つのゲームが大ヒットしているうちに次なる成長の種を探す。そうした意味で、新事業創出を担う川崎氏はキーマンだった。果たしてミクシィは川崎氏の抜けた穴を埋め、今後どのような新機軸を打ち出してくるのか。

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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