35歳を超えてなお「マリッジブルー」の現実 婚約者との結婚を延期する、38歳の本音

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西田さんのアドバイスは正しいと思うが、適切と言えるかどうかは別の問題だ。彼女も自分の至らなさは痛感しながらも、パートナーである西田さんには手放しで味方になってほしいのかもしれない。頑張ってみてダメならば教師を辞めて専業主婦になる、という選択肢はないのか。

「僕も奥さんには家にいてほしいのです。でも、彼女は外で働きたがるでしょう。人間関係さえ問題がなければ、(授業以外でも学校関連の仕事で忙しい)担任に比べると専科の教師は子育てもしやすいと思います」

この春、西田さんの彼女の異動がかなうとはかぎらない。ほかの学校に音楽教師の空きがなければ異動できないからだ。いずれにせよ西田さんは夏ごろまでに結論を出すつもりでいる。

「春以降も彼女に改善が見られない場合は、泣こうがわめこうが『どうしたの? これからどうしたいの?』ときちんと聞くつもりです。もし話し合いさえも嫌がるようであれば、別れることになるかもしれません。少しでも前向きな要素が見つかったら、夏ごろにまでには結婚します」

西田さんが愛情豊かな人物であることは疑わない。しかし、彼自身が指摘するように「若い頃とは違って、好きだからイコール結婚だとは思えなくなる」のは晩婚さんの短所であり長所でもある。恋愛における勢いは弱まる一方で、先々のことを考慮するようになる。

熟慮しても幸せな結婚ができるとはかぎらないが、少なくとも「自分はきちんと見定めた」と納得して結婚したいのだ。そうでなければ自分の決断に責任を負えない気がする。

「相手が精神的に落ち着いて、共同生活をちゃんと営めることがわかった時点で結婚したい」という西田さんの希望が、ぜいたくだとは思えない。春になって彼女が平静と自信を取り戻すことを祈るばかりだ。
 

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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