共産党が大躍進を遂げた2つの理由とは? 日本人はノーと言える政党を求めている

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選挙戦最終日13日、新宿駅前で街頭演説をする日本共産党の志位和夫委員長(写真:AP/アフロ)

――日本共産党が大きく躍進しました。

理由は2つあります。1つは、政府の方針に対 する信頼できるブレーキという新しい役割への期待です。そのことは東京知事選においても見てとれました。多くの日本人が、民主党をはじめとする野党が自ら主張を行い、強力な存在となった自民党と対抗できないでいることに失望していました。しかし、共産党は、原発再稼働に対しても、消費税に対しても、集団的自衛権に対しても、明確にノーと言えます。

第2に、選挙における戦術的な問題です。共産党は、ほとんどの小選挙区で候補者を立てることにより、今回の選挙で重要な役割を果たしました。つまり本当に張り合えたわけでないにしても、自民党に反対を表明したい人たちの票の受け皿になったのです。 その結果、同党は小選挙区で初めて勝利を収め、比例代表選では20議席も獲得しました。

共産党は議席を大幅に伸ばし、今や同党単独で国会に法案を提出できるようになりました。衆議院においては、実質的な反対勢力として期待されます。

――その一方で次世代の党が壊滅的な敗北をしました。

これは今回の選挙結果でもっとも興味深いことです。その名称とは反対に、実際のところ、同党は革新的というより非常に時代錯誤的でした。小さな政党で、日本について特異なビジョンを持った若干の政治家から構成されていました。今回の選挙で、同党が日本の世論から非常にかけ離れていることが明らかになりました。

民主党ブランドは死んでいない

――民主党の課題は?

民主党は今回の選挙で立派な成果を収めましたと思います。しかし主要メンバーの何人かは落選しました。海江田万里氏の落選は、象徴的な重要性を持ちますが、党代表選への道を拓きました。今後、民主党がとる方向を確認するためには、党代表選を見守らなければなりません。民主党内で、党のアイデンティティについて活発な議論が行われることを期待します。

つまり、民主党とは何か、何になりたいのか、回復するために、その野心をどう一元化したらよいかです。民主党ブランドはあまりに落ちぶれたと考える人たちもいますが、私はそうは思いません。今こそ気を取り直して、理想のために闘うときだと思います。そのためには、集中すること、とりわけ目標を一致させることが必要です。したがって、党代表選挙は極めて重要です。

――記録的な低投票率は、何らかの悪影響を与えると思いますか。

これは自民・公明の大勝利の主張に水を差す事態です。勝利したとはいえ、有権者の半数しか意見を表明しなかった事実は考慮されなくてはなりません。自民・公明連立政権は52%の投票率の一部しか獲得できなかったのであり、日本国民の大部分は政府のリーダーシップを明確に支持しているわけでありません。

――原発再稼働は前進すると思いますか。

日本のリーダーの誰一人として一気に推進できるとは思えません。原子力に関しては、新しい規制機関、安倍政権および各地域の間で議論が行われるでしょう。それは漸進的なプロセスであり、実証可能な安全性の向上を求める国民の当然の要求のために、慎重に進められるはずです。

――日本政府は沖縄に対するアプローチを変えるでしょうか、それとも辺野古の普天間代替施設の案をそのまま推し進めるでしょうか。

予想するのが非常に難しい問題です。日本政府が方針を変えるとは思えませんから、すべての関心は翁長知事、そして今回の選挙が知事のアプローチにどう影響を与えるかに集まることになります。知事は辺野古埋め立て承認の撤回を求めるかを決める必要があります。知事選を通じて沖縄の方針は変化しましたが、政府の計画が実行されるかを決めるという点で、重要なのは知事だと思います。安倍内閣と知事の話し合いでは、引き続き菅義偉官房長官が重要な役割を果たすでしょう。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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