東芝を危機から救った、2万5000通の手紙 3兆円の損害賠償はなぜ回避できたのか?

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ですからよき企業市民としての社会貢献活動や日頃から議員とのコミュニケーションに努めることがものすごく大事です。議員の相関関係や選挙区の利害関係なども頭に入っていないと、とんでもないスイッチを押してしまって逆効果になりかねない。

桑島:私が以前、角家さんのお話を聞いて非常に印象に残ったのは、日本企業ではワシントンでのロビイングの重要性がなかなか理解されないし、どうすればロビイングのできる人材を育成できるかもわからないということです。

人事ローテーションで2~3年ワシントンに行って、必要なときだけロビイストを使えばうまくいくようなものじゃないんだと。やはり議員一人ひとりと関係を構築するには、長くその場にとどまらなくてはいけない。

ワシントンだけ見ていても意味がない

角家:そうでなければ弁護士、コンサルタント、ロビイスト、PRエージェントにうまく使われて、フィーをむしられるだけですよ。私はワシントン駐在18年を含め2度の駐在で合計26年米国にいて、親の死に目にも会えませんでしたが、それくらい長くいなければ本物の関係にはならない。

桑島: 今、日米関係は貿易摩擦から直接投資の時代へと移ってきましたが、せっかくこれまで先輩たちが築いてくれたものを、私たちがちゃんと受け継いでいるのかという懸念があります。今の日本の企業に対して、アドバイスをするとすれば?

角家:みんな政治問題はワシントンしか関係ないと思っているけれど、草の根のレベルでのネットワークや、地域に貢献する企業市民としての活動実績が重要ですね。

銀行や商社では小さい支店しかないかもしれない。でもそれなりに地元の教育界に貢献するとか、ボランティア活動をするとか、活動の裾野を広げておいたうえで、やっとワシントンの話だと思うんですよね。

桑島:まだまだお聞きしたいことはたくさんありますが、今回はここまでにしたいと思います。ありがとうございました。

(構成:長山 清子)

桑島 浩彰 青山社中CFO

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くわじま ひろあき / Hiroaki Kuwajima

1980年石川県生まれ。東京大学経済学部卒業。ハーバード大学経営大学院/行政大学院修了(経営学修士/行政学修士)。

三菱商事株式会社、ハーバード大学留学を経て、株式会社ドリームインキュベータ (日系戦略コンサルティングファーム)に入社。国内大企業のグローバル戦略立案及び実行支援に従事。2012年5月青山社中株式会社 共同代表CFO就任。

2014年アイゼンハワーフェロー日本代表。グロービス経営大学院MBAプログラム講師兼任(2015年1月より)。米国、中国、アジアなど日本の政治経済に関する海外講演多数。

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