待ったなし! 「マイナンバー」は普及するか 3大シンクタンクが読む2015年の日本<第5回>

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短い猶予期間にどう対応するか

こういったマイナンバー制度であるが、開始までの猶予期間は短く、事業者の業務負荷(個人情報保護の運用体制整備やトレーニングなど含む)の増加が懸念される。当社の調査によると、現時点において、制度自体の認知はされてきているものの、必要性に関する理解が広がっているとは言いがたい。そこで、マイナンバー制度導入によるメリットを提供・訴求し、事業者や生活者からも普及を後押ししてもらう必要がある。民間を含むマイナンバーの利用範囲の拡大は2019年をメドに検討を開始するとされているが、現時点からID(ICカード含む)の民間利用の検討を始めておく必要がある。

なお、マイナンバー制度では、「個人番号カード」(顔写真付きICカード)と共に、自身の社会保障や税の情報を確認できるWebサイト「マイ・ポータル」も国民に提供される。2016年1月以降に希望者に交付されるこの「個人番号カード」では、健康保険証を早急に取り込んでいくことが政府の方針で決まっており、ICカードの空き容量に健康保険証の記号番号を書き込んで機能を追加すれば、健康保険組合に加盟する民間事業者の事業所単位などでICカードを配るという普及策も考えられる。

さらに、行政機関で交付される証明書・サービス(年金手帳や健康保険証など)、および民間事業者が提供するサービス機能(身分証明・会員証やクレジットカード、ポイントカードなど)が追加される可能性もある。

そこで、野村総合研究所(NRI)が、2014年7月に「情報通信サービスに関するアンケート調査」と題し、事業者や生活者のメリットを訴求し普及を後押しするために、「個人番号カードに追加機能があれば便利で利用するかどうか」などを調査した。

その結果によると、「便利」と思う割合は77.4%(「便利なので利用すると思う」28.4%、「便利であるが失くすと危ない等の理由で利用しないと思う」49.0%)であるが、そのうちの3分の2近くは失くすと危ないなどの理由で利用しないという結果であった。これは、情報セキュリティやプライバシー漏洩の懸念から、便利であってもほかの機能とは分けて利用したいという生活者の意識が表れた結果であろう。

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