民主、自民大連立に小泉氏は警鐘

民主、自民大連立に小泉氏は警鐘

塩田潮

 今日、臨時国会が閉幕するが、やはり衆参ねじれの壁は高かった。

 このままだと、自民党政権末期と同じく、民主党政権は「死に体」化が必至だ。壁突破の方法は、(1)自民党との大連立、(2)中間政党との中・小連立、(3)部分連合、(4)「直近の民意」獲得のための解散・総選挙、(5)政界再編の5つの道しかない。菅首相は臨時国会で与野党の「熟議」による部分連合方式を目指す一方、公明党に秋波を送り続けた。

 だが、うまくいかず、(2)と(3)は望み薄と判明した。(4)は野党転落のリスクが大きい。(5)は仕掛けるプランというよりも政争や試行錯誤の末に行き着く道だろう。となると、(6)の大連立が現実味を帯びてくる。

 「動物的勘」が売りの小泉元首相がその匂いを嗅ぎ取って、12月1日、親しい政治家たちの会合で「自民党は絶対に乗るべきではない」と唱えたという。大連立は、民主党にとっては野党転落につながる選択で、自殺行為と見るべきだが、自民党には「支持率上昇・政権交代」の展望が開けるというメリットもある。だが、小泉氏は「絶対ノー」と言う。

 大連立では大政翼賛会的政治が問題となるが、「安定政治の危険」を懸念したと思われる。かつて小泉氏は著書『官僚王国解体論』で「政治が不安定だと、改革が難しいのではないかという人がいる。が、これは話が逆だ」と書いた。大連立で喜ぶのは誰か。真っ先に思い浮かぶのは霞が関の官僚機構だ。大連立のほうが改革が進むという主張もあるが、それは霞が関の手のひらの上で、霞が関が望む改革を進める場合だろう。霞が関の構造に斬り込む改革は、小泉氏が説くように、実際は不安定政治のほうが効果的かもしれない。

 戦後政治での最大の大連立の実験は、1955年の保守合同という名の自民党の誕生だった。それによって確立したのは永田町と霞が関が一体の「政・官もたれ合い」システムだ。大連立は、民意による政治選択をあきらめ、中央集権体制下での官僚支配の再現を許す「いつかきた道」である。

 民主、自民両党での大連立志向派の蠢動を見て、小泉氏は警鐘を鳴らさなければと思ったのではないか。

塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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