(第57回)人事が下す学生への審判。「とりあえず」「手当たり次第」就活にいらだつも「嘘をつかないで」

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●「とりあえず」「手当たり次第」の就活に対し、人事はいらだち

 学生の就活に関しては手厳しい。幼稚、未熟、いい加減な態度をたしなめる意見が多い。特に「とりあえず」エントリー(就活)への批判が多い。

・深く考えずに、とりあえず選考を受けたり説明会の予約をしたりすること。企業にとっても、またその企業に本当に入りたい学生にとっても、迷惑でしかない。
・「どこでもいい」というスタンスで、とにかく内定取得のために活動すること。内定がゴールではない、社会人になるためのスタートなのだ。
・イメージのみで事業の特性や自分との相性を考えずに活動しないでほしい。
・知名度の高い企業、就職人気ランキング上位企業のみを受ける。
・十分な企業研究を行わず、手当たり次第に多くの企業を受ける。
・「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」方式の就職活動。当たらないし、お互いに労力が無駄に思えます。
・就職ナビ各社や就活支援業者などに頼り切った活動。

 いずれももっともな感想だ。「とりあえず」「手当たり次第」エントリーはこれまでも多かったが、2011年度採用では目立って急増し、学生のマナー(活動の品位?)が下がったと感じる人事が多かったようだ。
 予約だけ入れて説明会に出席しない学生が多く、「今年は目に余るほどドタキャン率が高く、母集団形成が読み辛かった」という不満も多くの人事が共有している。

●就活の壁をはい上がり、達成感を味わってもらいたい

 学生に対するいらだちを表明する人事も多いが、その一方で厳しい就職戦線で右往左往する学生に対する助言も多い。キーワードは「自主性」。自分の頭で考え、行動することを勧める意見が多い。

・楽な就職活動をしないでほしい
・自分の結婚相手を探すようなものなので、しっかりと目的意識を持って、相手の理解を深めたうえで望んでほしい。
・やみくもにエントリーを重ねることはやめよう。自分なりの基準を持って判断しないと興味が湧かず徒労に終わるだけ。また、選考に進んだらあらためて自分がこの会社で働くイメージを持てるか熟慮してほしい。
・ゆとり世代で過保護な環境で育ってきた人たちが多いように感じている。とにかく就職活動で壁にぶち当たり、挫折してはい上がり、達成感を味わってもらいたい。その経験なしに社会に出てしまうと、社会保障にぶら下がるような社会人になってしまうと思う。
・周囲の状況や親の意向に振り回されすぎた就職活動はしてほしくない。あくまで周囲の声は参考意見であり、自分の人生は自分で決断しなければならない。空気を読むことはできても自分が見えない学生が多すぎる。自分が選んだ就職期活動でなければ、これからの社会人生活にもプラスに働かないと考える。
・マニュアル本の読みすぎはよくない。印象を残そうとするミエミエのアピール、質問に対する返答の丸暗記。そういう演技ではなく、自分の言葉でしっかり話してほしい。ちょっとくらい言葉使いがおかしくても気にすることはない。

●就活で嘘をついた学生が社会人になってから…

 もっとも印象に残ったのは「嘘をつかない」という言葉だ。人事が困るからではない。社会人になって困ることになると言うのだ。

・嘘をつくことに慣れないでほしい。内定は手段でしかなく目的ではないということをしっかりと頭に入れて取り組むことが大切だと思う。逆に、嘘をつき続けることに慣れてしまうと、社会人になってからも同じことを繰り返してしまう。

 成功の法則は意外に単純という意見がある。嘘をつかない、約束を守る。それだけで幸せな職業人生が送れるというのだ。
 逆に嘘をつくこと、約束を守らないことに慣れてしまうと、その人の人生は失敗するだろう。今どきの就活は、嘘をつく、まねをする、連絡せずに欠席する、と悪しき習慣を身に付けさせている可能性がある。

次回は、大学のキャリア教育に対する人事の声を紹介する。
HRプロ株式会社(旧社名:採用プロドットコム)
(本社:東京千代田区、代表取締役:寺澤康介)
採用担当者、教育・研修担当者をはじめとしたHR担当者のための専門サイト「プロ.com」シリーズを運営。新卒/中途採用、教育・研修、労務、人事戦略などの業務に役立つニュース、ノウハウ、サービス情報、セミナー情報を提供している。HR担当者向けのセミナーも東京・大阪で開催している。
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