10の図表で読む「円高と円安、どちらが得か」 ズバリ長期的には円高が望ましい
昨年はアベノミクス効果もあって24%円安、株価は65%上昇(2012年末~2013年末の値)し、「景気がよく」なりました。
それ以前は著しい円高傾向が続きました。この円高は、リーマンショック後、アメリカがドルの量(マネタリーベース)を3.5倍に拡大したのに対し、その間、日本は1.5倍しか拡大しなかったことにも原因があります。これが、アベノミクス後に適正な水準に戻ったのです。
ところが、「円高是正が進んだ際、製造業の多くは歓迎した……しかし……110円まで円安が進行すると、受け止め方は一様ではない」(日経新聞2014年10月9日「円安の現場3 輸出が伸びない」)となります。いったい、なぜでしょうか?
長期的には円高が望ましい理由
短期的には、円高・円安は、輸出入額に変動を与えます。日本の主な輸出製品は、プラントや製品(クルマなど)です。これらの現地価格は、為替を反映してすぐに変更されるわけではありません(リーマンショック後、ユーロは2008年7月からの3年半で4割値下がりしたが、この間、BMW・ベンツ・VWは値下げせず、ベンツCクラスは、逆に値上げしました)。トヨタも2013年度、円安の押し上げもあって過去最高経常益になりました。輸出数量に変化がなくても、輸出額は円安分、見かけ上、上昇するのです。
一方、輸入額でいちばん多いのは素材産業の品目(鉄鉱石・石炭・石油など)で、これらの価格は、製品と違い毎日のように変動します(長期契約をしていてもせいぜい年単位です)。そのため、円安はすぐに輸入額に影響します。短期的な為替変動は、その期の企業の業績に大きく影響します。
結局、円安になると、輸出額も、輸入額も増えるのです。
しかし、日本は「モノづくり」の国ではありません。GDP(国内総生産)に占める製造業の割合は18%で、75%は第3次産業です。商業やサービス業はその場で生産=その場で消費ですから、一部(保険、通信、運輸、商標など)を除くと輸出産業になりえず、輸入の影響を受けることのほうが多いのです(すでに、輸出の4割が円建て決済なのに対し、輸入は2割にすぎません)。
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