国際弁護士 アメリカへの逆上陸の軌跡 桝田淳二著 ~法務担当者だけでなく一般読者も楽しめる

国際弁護士 アメリカへの逆上陸の軌跡 桝田淳二著 ~法務担当者だけでなく一般読者も楽しめる

評者 中岡 望 東洋英和女学院大学教授

 アメリカは訴訟大国だと言われる。メディアを通して訴訟にまつわるさまざまなエピソードが伝えられているが、正確なところはなかなか理解できない。しかし、国際化の中で今まで以上に正確な情報が必要になる。それは専門的な法律知識にとどまらず、社会的な理解も必要となる。本書は30年以上に及ぶ体験を元にアメリカの訴訟社会の実像を描いたドキュメントである。

今年、トヨタ自動車が深刻な訴訟問題に巻き込まれた。それは、日本から見ていると異様に思われた。各地で起こる数多くの代表訴訟には理解を超えるものがあった。著者は、代表訴訟の背景を「弁護士は新聞その他で事件になりそうなものを嗅ぎつけると、すぐに原告になりそうな人のところに行って成功報酬で訴訟を引受け、クラスアクションを提起する」と説明する。しかし、代表訴訟がすべて悪いわけではない。集団訴訟は「企業等に問題を起こさないように緊張感を与える効果もある」と指摘している。

また、著者は“訴訟ビジネス論”を唱える。すなわち「訴訟も所詮ビジネスの一部であるので対費用効果を考えて、低い金額で和解するのも現実的な戦略である」と主張する。こうした発想は日本人にはなじみにくいが、実際にアメリカで多くの訴訟を扱ってきた経験から出てきた言葉である。

こうした訴訟の実態を理解できないまま、訴訟に巻き込まれていく日本企業が多く存在する。また、いかに多くの日本企業が弁護士選択で過ちを犯しているか、十分に弁護士を使いこなしていないか豊富な事例で説明している。さらに、訴訟の際に極めて重要な「証拠開示制度」についても詳細を説明するなど実際的な情報を盛りだくさんに提供してくれる。

ますだ・じゅんじ
日本および米国ニューヨーク州弁護士。1943年生まれ。東京大学法学部卒業。68年弁護士登録。71年コロンビア・ロースクール卒業。桝田江尻法律事務所などを経て、桝田国際法律事務所を設立。長島・大野・常松法律事務所と提携。

日本経済新聞出版社 2520円 388ページ

  

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