メイド・イン・ジャパンは終わるのか 「奇跡」と「終焉」の先にあるもの 青島矢一/武石 彰/マイケル・A・クスマノ編著~問題の所在が周到かつ過不足なく明らかに

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メイド・イン・ジャパンは終わるのか 「奇跡」と「終焉」の先にあるもの 青島矢一/武石 彰/マイケル・A・クスマノ編著~問題の所在が周到かつ過不足なく明らかに

評者 中沢孝夫 福井県立大学特任教授

 引用したい箇所がたくさんある。日本のものづくりに関する問題の所在が、自動車とエレクトロニクスという二大産業を中心に、実に周到に、かつ過不足なく明らかになっている。

かつては国内でマーケット・シェアをめぐって激烈な競争をし、それがそのままあふれるようにして輸出に向かった、日本のものづくりのパターンが、グローバル化のなかで大きく揺さぶられている。本書は次のように語る。

「日本企業の強さは、『完成品』『部品』『材料』といった従来の分業の枠組みのなかで発揮されてきたものである。それに対して、半導体とデジタル技術の進歩は、顧客への適合性と規模の経済性のトレードオフに新たな方程式をもたらし、それが従来の分業の枠組みに変革を促すことによって、完成品メーカーから多くの付加価値創出活動を奪い取る可能性を持っている」(140ページ)。

「デジタル技術の実用化にともなって、さまざまな製品の相互接続性が高まり、従来の製品システムの境界自体が曖昧になってきた。テレビ、パソコン、オーディオ機器、カメラ、ビデオカメラ、ファクス、スキャナ、携帯電話などさまざまな電子機器が相互に接続され、大きなネットワークシステムを形成するようになっている」(300ページ)。

このような事態は「各製品が受け持つ機能の再定義を促」し、「それまで完成品と考えられてきた製品はもはや、安定した境界を持つ独立の存在ではなくなってきた」のである。となると、最終製品を起点として製品を最適化することで強い競争力を示してきた日本の企業群は、こうした産業構造への転換には、必ずしも馴染みがよくないのである。

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