本の読み方ひとつで、子どもは変わる! 菅谷明子さんに聞く「読み方」「学び方」

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日本では当事者がリーダーになることも少ないですし、社会的立場の高い人が必ずしも社会をよくするために行動したり、またそれを応援する人が出てくるということも、まだまだ少ないのではないでしょうか。

先日の都議会でのヤジ問題も、多様性の受容と想像力の欠如とでも言いますか、自分と違う立場の人に対して、別の視点から見ることでその人の状況を想像し、理解し、受容し、柔軟に対応するということが欠けているように思います。

こうした力は、答えが用意された学びからだけでは、なかなか身に付きません。でも、読書の仕方を工夫することで身に付く部分があるかもしれません。

これとは別に、日本では子ども向けの本というと道徳的だったり、子どもをピュアな存在ととらえた美しい物語が多い気がしていますが、米国では両親の離婚やいじめ、学校でのトラブルなど、子どもを取り巻く悩みや社会問題をテーマにした本も多く、問題解決や心の支えになるような本が数多く出版されています。読書はプライベートな行為なので、家族や友だちや学校の先生に言いにくいことがあっても、読むことで救われることもあると思います。

「障害者の方は大変」と思うだけではダメ

行動を伴う共感力というのは、ひとつのトピックに対して多角的な視点を教科横断的に学ぶことによっても、強化することができると実感しています。娘の学校では毎年3~4つの柱となる年間テーマが掲げられ、それを各教科でカバーするという形で授業が進むのですが、昨年はテーマのひとつが「障害者」でした。

まずはヘレン・ケラーの伝記を読み、ディスカッションを重ねて、続いて盲目の方が実際にクラスに来て話をし、質問に答えていただき、その後、子どもたちは盲導犬の訓練施設を見学に行きました。

それから、私がコーディネートしてMITメディアラボの義足研究のグループを訪ね、テクノロジーがいかに人間の能力を強化してくれるのかを目にすることができました。義足と言うと失われた脚の機能を補うというイメージを持つ子どもが多かったのですが、今の義足はそれだけにとどまりません。義足によって背丈も変えられますし、義足を付けていない人よりも早く走れて、高く跳ぶこともできる。

子どもたちは、「障害者」というテーマをまったく違った視点から見ることができましたし、「障害を持った人に対して偏見を抱いていたかも」と気がついてくれたようでした。

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