サントリー「BOSS」が映す容器コーヒーの大変遷 「発売30年」平成→令和で飲まれ方はこう変わった

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社内で “四天王” と言われるBOSS缶コーヒーの売れ筋商品(筆者撮影)

缶コーヒーの主要販売先は自動販売機だ。全国各地にあり便利だが、設置台数は年々減っている。日本自動販売システム機械工業会によれば「404万5800台」(2020年12月末、対前年比97.5%)で、2015年の約500万台から2割減。この約56%が飲料の自販機だ。

こうした設置台数減少には、設置場所の飽和や採算性など複数の理由があり、コアユーザーも昔ほど自販機一辺倒ではない。例えば現場で働く作業員も、昼食時は近くのコンビニに行く人が目立つ。その際に一緒に買うのはペットボトル飲料が多いという。

「コーヒー飲料はペットボトルが主流となりましたが、缶飲料の存在が低下したわけではありません。例えばエナジードリンクは缶が中心ですし、缶のスープも人気です」(大塚さん)

缶コーヒーは今でも自販機の主力商品だ(筆者撮影)

働き方が変われば、コーヒーの飲み方も変わる

缶とペットボトル以外に「チルドカップコーヒー」(首位ブランドは森永乳業の「マウントレーニア」)もある。市場規模は缶コーヒーの約1割だが一定の存在感があり、女性に人気の飲料だ。何年か前の取材ではこんな声も聞いた。

「カップでコーヒーを飲むと口紅が落ちるので、容器に直接口をつけたくない。その点、ストローで飲めるチルドカップコーヒーは、気にしないで飲めます」(30代の女性会社員)

だがコロナ禍で、職場での執務はマスク着用が基本。在宅勤務も増えて口紅をつける機会が減った。働き方と容器コーヒーは意外に関連性があるのだ。

働く人や環境の変化は、コロナ禍の在宅勤務以前から進んでいた。

「昔と違い、IT系で働く人が増えました。クラフトボスはこうした層にも訴求しています。例えばシステムエンジニアやプログラマーの方は、仕事中は画面での作業でデスクに座り続けています。そして24時間、365日交代制の勤務で、多くはプロジェクトごとに働く会社が変わります。この人たちにインタビューしながら、クラフトボスで新しい相棒像をつくっていったのです」(大塚さん)

最近は、ペットボトルも割って飲むタイプ(希釈用)が人気を呼ぶ。カフェチェーンを取材すると「コロナ禍のEC販売でコーヒー豆や抽出器具が売れた」と口をそろえる。在宅のイエナカ消費では、ひと手間かけて飲料を作り、カフェ気分を味わう人も多いようだ。

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