「近畿か東海か」微妙な立場、三重ご当地鉄道事情 近鉄が圧倒的だが、駅ではJRと改札口共有も

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JRと近鉄がともに乗り入れている津・松阪・伊勢市の各駅では、改札口を共有している(桑名駅と鳥羽駅は2020年に改札が分離された)。構内では跨線橋の色合いなどから両者が厳然と区別されているのは明白なのだが、お客としてはどちらに乗るのにも同じ改札口を通ることになる。

2009年の台風で被災し、存続が危ぶまれたが2016年に復旧した名松線(撮影:鼠入昌史)

これは大阪など関西における私鉄とJRとの関係とはまったく違う。あちらでは、ほとんど同じ場所に駅があるのにJRは天王寺で近鉄は大阪阿部野橋、JRは大阪で阪急と阪神は大阪梅田などと駅名からして別物で、“違う駅ですよ”とアピールしてくる。それが三重にやってくると、JRと近鉄がなんだか共存しているような感じになっているのだ。

このあたりの裏事情を探っていくとまったく別の記事が成り立ってしまうので疑問は疑問のままにしておくが、こうしたあたりに関西でもない、三重の微妙な立ち位置が現れているのかもしれない。

そんな近鉄王国の三重において、唯一のJRの独壇場になっているところもある。紀勢本線、紀伊半島南部の旅である。

南紀はJRの独壇場

紀勢本線は亀山駅を起点に津・松阪を経て志摩半島の付け根を横断、山の中を走って紀伊長島・尾鷲・熊野などを経て和歌山県との県境を越えた新宮駅でJR西日本にバトンを渡す。伊勢志摩観光においてはJR参宮線と近鉄山田線・鳥羽線が争うことになるが、ここはまさに紀勢本線以外は通らない。

紀勢本線特急「(ワイドビュー)南紀」。新型車両のデビューを控える(撮影:鼠入昌史)

鉄道だけで言えばライバル不在、完全無欠の独壇場。特急「(ワイドビュー)南紀」は、2022年春のダイヤ改正で「(ワイドビュー)」の愛称がなくなって「南紀」に。今後ハイブリット車両のHC85系が投入される予定という。ワイドビューの有無はともかく、新型車両がやってくれば紀伊半島においての紀勢本線の存在感が増していくことを願うばかりだ。

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さて、三重県の鉄道の旅の最後に、ひとつだけケチをつけさせていただく。近鉄とJRの改札が共有されている駅がいくつもあるということは話したが、ここでややこしいのがJRは交通系ICカードが使えず、近鉄は使える、ということだ。

2022年2月時点でJRの交通系ICカードは亀山駅までで、津も松阪も伊勢市もICカードの圏外になっている。近鉄は全線全区間使えるというのに……。いろいろ事情があるとは思いますが、なんとかなりませんかね、これ。

鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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