「近畿か東海か」微妙な立場、三重ご当地鉄道事情 近鉄が圧倒的だが、駅ではJRと改札口共有も

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四日市の市街地により近いのは近鉄だ。近鉄百貨店が併設された立派な駅ビルで、駅の周囲には四日市の繁華街が広がっている。まさに四日市という都市は近鉄四日市駅を中心に展開されているようなものだ。

四日市あすなろう鉄道は三岐鉄道北勢線とともに軌間762mmのミニ鉄道だ(撮影:鼠入昌史)

対して、JRの四日市駅はそれより遠く東に離れたところにあって、いささかうらぶれている。両者は“中央通り”という大通りによって結ばれているのだが、近鉄とJRの四日市、比べてみればそのにぎわいの差は歴然である。

ただし、だからといってJRの四日市が格下というわけではあるまい。JR四日市駅からは伊勢湾沿いの工業地帯に向かって貨物の専用線が分岐しており、いまでも貨物駅が併設されているなど、工業都市・四日市を支えてきたターミナルという側面を持っているのだ。

つまり、人の近鉄、工業のJR(というか国鉄)という役割の棲み分けができているということなのだろう。そう考えると、近鉄四日市駅のにぎわいとJR四日市駅のいくらか殺伐とした感じは、それぞれどちらもこの街の本質を表しているような気がしなくもない。

大阪や伊勢を目指す

さて、そんな四日市駅を出てしばらくすると、名古屋以来寄り添ってきた関西本線と近鉄名古屋線は別れの時を迎える。関西本線が鈴鹿川に沿って西に転進、近鉄はほとんどまっすぐ海沿いに南に向けてひた走るのだ。

伊勢平野を走る伊勢鉄道。JR直通列車以外は自社車両が活躍する(撮影:鼠入昌史)
快速「みえ」は名古屋と伊勢を伊勢鉄道経由で結ぶ(撮影:鼠入昌史)

関西本線はそのまま鈴鹿山脈に突撃し、ふもとの亀山駅でJR東海からJR西日本へバトンをタッチ。電車から気動車に乗り換えて加太越えを経て奈良盆地へ入り、最後は大和路線という愛称を名乗って大阪は天王寺、そして難波へと続いていく。

亀山駅からは紀勢本線という紀伊半島の南端をぐるりと巡る長大ローカル線が出ているのだが、名古屋方面からは亀山駅で乗り換えるよりも元国鉄伊勢線、第三セクターの伊勢鉄道を間に挟むルートのほうが便利だ。快速「みえ」や特急「(ワイドビュー)南紀」も伊勢鉄道経由で走っている。

ちなみに、F1日本グランプリが行われる鈴鹿サーキットは伊勢鉄道の鈴鹿サーキット稲生駅が最寄りである。紀勢本線方面に先を行けば、多気駅で参宮線が分かれて行き着くところは伊勢、鳥羽だ。

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