話題のチリ映画、ピノチェト軍事独裁政権への『NO』
チリ映画『NO(ノー)』が現在、日本でも公開されている。1988年にチリで行われた、ピノチェト軍事独裁政権の信任を問う国民投票が題材だ。反独裁政権派=“NO”陣営のテレビCMを手掛けた広告マンの目線で、民主化を達成したキャンペーンの様子が描かれる。
ちょうど安倍首相が中南米を歴訪し、チリのバチェレ首相と会談した時期と公開が重なったこともあり、僕が担当するTBSラジオの番組「荻上チキ・Session-22」でも連動して、「チリの民主化プロセス」と題する特集を組んだ。
僕自身も2004年に取材でチリを訪れたことがあるのだが、一般的な南米のイメージとはかなり異なる国だった。治安がよく、ヨーロッパ各国からの移民が作った街には欧州風の建物が立ち並ぶ。人々はラテンのノリというよりも、むしろシャイでまじめな印象。ウニなどの魚介類にも恵まれ、日本人にはなじみやすい環境だ。マゼラン海峡に面する世界最南端の都市、プンタ・アレーナスの小さな博物館で出合った古ぼけた先住民の写真は、まるで昔の日本人。地球の裏側で思いがけずご先祖様に会えたようで、何だか目頭が熱くなってしまった。
さて、映画『NO』を取り上げた特集にはリスナーから予想以上の反響があった。それはおそらく『NO』に込められたメッセージが、現在の僕たちにも重要な示唆を与えてくれるものだからだろう。
経済成長や安定をアピールするピノチェト政権に対し、独裁に反対するグループは当初、デモを暴力で弾圧する軍隊の映像などを使って、怒りや恐怖、悲しみを強調し、「こんな状況を続けるのですか? “NO”に一票を」と訴えるCMを制作する。
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