一週間 井上ひさし著

一週間 井上ひさし著

4月に亡くなった筆者の最後の作品。シベリアへ送られ日本語新聞の発行に携わるよう命じられたロシア語ぺらぺらの元左翼・小松修吉が、収容所のロシア人相手に機知を駆使して縦横無尽に対峙する奇想天外な物語だ。戦時下日本での非合法地下活動、非合理な抑留生活の哀歓、そして脱走軍医が手に入れたレーニンの驚愕の手紙をめぐってソ連幹部と主人公が巻き起こす虚虚実実の「6日間」は息つく暇もない。

日本の特高やスパイ、ソ連の不可侵条約無視、収容所で多くの兵士を死に追いやった旧日本軍下級将校たち、ロシアの教条主義や少数民族問題など深刻で重いテーマが、上質のユーモア、エスプリ、ギャグ…の笑劇に変身する。秘めた怒りが笑いという甘味料をまぶされるとき、それが深い問題提起となるのは井上作品の特質だが、今回も極上の1週間をたっぷり楽しめて、かつ何かが残った。最後は、紙面から作者の楽しげな顔が浮かんでくる。(純)

新潮社 1995円

  

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