「スタバの次」の時代到来は必然である? ブルーボトル人気の裏にある、人間の本質的欲求

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セカンドウエーブではコーヒーの味を重視するようになったが、基本は大量生産・大量販売のビジネスモデルだ。商品として味などの品質をそろえる必要がある。

しかしコーヒー豆も農作物である。野菜と同様、個体差が大きい。そこで味のバラツキを抑えるために標準化が図られた。たとえば、コーヒー豆を大量調達しコストを下げる。複数の豆をブレンドし一定の味を維持するように調整、長時間焙煎で深煎りにして豆の個性を薄くする。自動抽出マシンでつねに同じ味のコーヒーを抽出する。

これとは対照的なのがサードウエーブで、豆の個性や多様性を楽しもうと考える。調達は小規模だが、流通過程の透明性を重視する。ライバル同士でもおいしいコーヒーは教え合い、切磋琢磨する。オープン&シェアを基本とした、新しいコーヒーの潮流がサードウェイブなのだ。なお、セカンドウエーブとサードウエーブを比較したのが次の図だ。

この比較を見て、「似たような変化が、ほかの業界でも起こっている」と思われた方も多いだろう。

セカンドウエーブからサードウエーブの進化の本質は、「標準化と均質性の追求、独占、クローズ」から、「個性と多様性の追求、オープン&シェア、透明性」への大きな価値観の転換だ。現代ではこの変化が至る所で起こりつつある。

コーヒーだけじゃない、「第3の波」

今では信じがたいことだが、私が社会人になった1980年代、男女の初任給に差をつけている企業が多かった。女性社員の残業にも制限があり、中には「オフィスでは仕事ができないのでお手洗いの中で残業を続けた」という人もいる。「これはいくらなんでもおかしい」ということで、男女雇用機会均等法が1986年に施行され、その後、何回か改正が続けられている。

なぜ女性社員が差別されてきたのか? それは従来の日本企業が、「男性、大学新卒、日本人、正社員」を従業員の標準としていたからだ。多くの企業が、従業員に画一的な価値観を求めていたのだ。しかし、誰もが同じ発想しかできない集団は、新しい発想を生みだしにくいし、変化する多様な市場のニーズにも対応できない。

本来、人は一人ひとりが個性的であり、多様だ。それは男女差にとどまらない。国籍・宗教・価値観など、さまざまな要因がある。そこで個性と多様な価値観を尊重しようという活動が「ダイバーシティ」だ。「ダイバーシティ=女性活用」と思われがちだが、もとの「ダイバーシティ」は「多様性」という意味であり、本来、より広い意味なのだ。

「ダイバーシティ」というと、今はやりの女性活用だったり、社会貢献的な意味合いでとらえる向きもあるだろうが、それを経営戦略の中核に据えてよみがえった企業もある。代表例がIBMだ。

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