産業リサーチ(外食) 自由市場ゆえ激しい浮き沈み、新業態開拓狙いM&Aも

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規制もなければ参入障壁もなし。外食産業は群雄割拠の世界である。しかも、はやりすたりが早い。前期まで増益を続けていた企業が、今期いきなり赤字転落という事態も珍しくはない。
 業態別に、まずはハンバーガー。国内最大の外食企業、日本マクドナルドホールディングスが君臨しているが、価格政策の失敗もあり、同社は2002年度に赤字転落。本格回復には時間がかかりそうだ。居酒屋・パブ業態は浮き沈みが最も激しい。かつての人気チェーン「天狗」を展開するテンアライドは老朽店対策に追われているし、つい最近まで行列ができていたワタミフードサービスの居食屋「和民」も、今や既存店売り上げの大幅減に苦しむ。むしろ昨今は、チェーン店に代わって店舗作りにこだわった個人経営の店が「旬」だ。
 西洋料理業態を支えているのは、すかいらーく、ロイヤル、デニーズジャパンのファミレス御三家。ただ、この業態も競争が厳しく、各社とも既存店売り上げはマイナス。新規出店効果で何とか増収を維持している。今や日本の国民食ともいわれるラーメン・餃子だが、大規模にチェーン展開している企業は意外と少ない。そんな中、ラーメン一杯三九〇円の幸楽苑、ハイデイ日高が健闘している。 
 日本料理・寿司分野では、消費低迷で全体が苦戦する中、全皿100円寿司のカッパ・クリエイトが最高益を更新中。喫茶店分野でも、全体のパイが伸び悩む中、低価格チェーンのドトールコーヒーが最高益更新を継続している。一方、エスプレッソブームを巻き起こしたスターバックス コーヒージャパンは、出店計画を急ぎすぎ赤字転落となってしまった。
 外食業界も、創業者からの世代交代の時期を迎えており、それにつれて再編機運が盛り上がっている。その台風の目となっているのが牛丼チェーンの「すき屋」を展開するゼンショーだ。ココス、ウェンディーズ、ビッグボーイを立て続けに買収。うどんの「久兵衛屋」を出店する大和フーヅへの資本参加など、M&Aの台風の目となっている。業態を新たに開発するよりは買収したほうが早い、というスピード重視の戦略から、M&A攻勢に出る会社はこれから増えそうだ。

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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