特種東海製紙の「シュ」は、なぜ「種」なのか? 特別な紙を作るトクダネさんの秘密

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ちなみに製紙業界で特種東海製紙は「トクダネさん」と呼ばれている。すべての新聞記者には、特種東海製紙の紙を御守として身に付けることを勧めたい。というか、特種東海製紙は今すぐ御守を商品化したらいいのではないだろうか。

冗談はさておき、ファンシーペーパーは11号機と12号機、仲良く二つ並んだ抄紙機でつくられる。見学時には、片方ではタントという名のP50という薄いピンクの色の紙が、もう片方ではレザック66という紙のクリーム色が抄かれていた。

タントの誕生にはデザイナーの故・田中一光さんが深く関わっている。名称も150色というほかにはないバリエーションも、田中さんのアドバイスの下でつくられた。今では、出版業界では「困ったときはタント」と言われる存在になっているそうだ。

一方のレザック66は、1966年に誕生したレザーライクな紙だ。きっと誰もが見たことがあるというか、持っているはずだ。レザック66は卒業文集の表紙でおなじみの、あのエンボス加工された紙である。

本当に、紙とひとことで言っても様々であり、それの原料であるタネもまた様々であろうことがよくわかる。今後は同社は多彩な紙の範囲をさらに広げ、放射性物質の吸着シートやカーボンナノチューブでつくるシートなどにも力を入れていくという。

1964年の東京五輪を「紙」で支えた

「特種東海製紙Pam」には、1964東京五輪のポスター、チケットなどが展示されている

工場見学のあと、少し離れたところにある『特種東海製紙Pam』という施設で、紙に関するコレクションや、現在の商品、そして過去に手がけてきた商品などを見せてもらう。すでに生産を中止した紙もある。中止の理由は、ニーズ減のほか、大手の参入。大手がつくる紙をつくるのは“特種”らしくないとの思いがあるのだろう、冒頭で紹介したもののなかにも、現在はつくっていないものもある。

展示品の中に、日の丸と五輪マークが織り込まれた金属製の網を見つけた。前回の東京五輪の入場券用の「白すかし」と呼ばれるすかし入りの紙を抄いたときに使ったもので、手編みだという。金属糸の刺繍のようで、まるで芸術作品だ。こういった網を縫う人は網縫(あみぬい)と呼ばれ、現在、同社には3名いる。

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