プロ野球の世界には“ブルペンエース”と言われる投手が数多く存在する。練習ではすごい球を投げるにもかかわらず、試合になると持てるパフォーマンスを発揮できなくなってしまうのだ。
その理由について、投手たちは「ブルペンと試合では風景が変わるから」という。相手打者と対峙することで外的なプレッシャーにさらされる一方、結果を残さなければならないという内的な重圧ものしかかる。実戦で力を発揮できない要因を「メンタルの問題」で片付けては、心の弱い者には救いがない。どうすれば、ブルペンエースは真のエースになることができるのだろうか。
球種はふたつしかない
そのヒントを教えてくれるのが、西武の守護神・高橋朋己だ。社会人の西濃運輸から2012年ドラフト4位で入団して2年目の今季、シーズン序盤からクローザーとして起用されると55試合に登板して2勝1敗26セーブ、防御率1.65と抜群の安定感を発揮(今季の成績はすべて9月7日時点)。石川歩(ロッテ)、浦野博司、上沢直之(ともに日本ハム)とパ・リーグの新人王を争っている。
高橋の成績で際立つのが、高い奪三振率だ。昨季はアウトの半分を三振で奪い、今季は164個のアウトのうち74個を三振で仕留めている。投げるボールは球速140km代中盤のストレートとスライダーが中心で、時折スプリットを織り交ぜるくらい。高橋は「僕にはストレートとスライダーしかありません」というが、なぜふたつの球種だけで打者をねじ伏せることができるのだろうか。
捕手の炭谷銀仁朗はこう見ている。
「球の出どころが見えにくいからですね。バッターは真っすぐのスピードを球速以上に感じています。そして、低めの厳しいコースに来る。高めの真っすぐは威力があるし、低めに投げにいったボールが高めに浮いても問題ないくらい、腕の振りがいい。バッターは前に飛ばすのがきついと思います」
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