ゴルフ界の子育て事情

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プロゴルファー/小林浩美

 米女子ツアーには、託児所が付いています。結婚して子どもができても、ツアーを続けたい選手は多くいます。そんな選手たちのために毎週試合先で託児所が設置されるのです。場所はゴルフ場のクラブハウスの一室であったり、選手がたくさん泊まるホテルの一室であったり。選手はスタート時間に合わせて子どもを預け、プレーして練習が済んだら子どもを引き取りに向かいます。

たとえば、米ツアーではどの試合も予選2日間は、スタート時間が午前組、午後組に分かれます。夏時間になると早朝7時からスタートし、午後の最終組は13時過ぎのスタートまであります。選手は自分のスタート時間に合わせて子どもを預けたり引き取ったりするのです。私が米ツアーに参戦したのは1990年からですが、預けられていた年齢は乳幼児から小学生くらいまでいたようです。当時は30歳代の男性が保育士さんで、たくさんのおもちゃに囲まれながら子どもたちと遊んでいるなという印象でした。ただ、子どもを産んですぐ復帰した場合、自分の母親がツアーに同行し子どもの面倒を見てもらっている選手や、成績上位の選手になるとベビーシッターを雇い、ツアーに同行してもらっている選手もいました。同行していない子どもたちはというと、学校が夏休みになると試合先に顔を見せます。ゴルフ場の中をお母さんにべったり張り付いて歩く姿やキャディをする姿をよく見かけました。

米ツアーは東海岸から西海岸まで移動距離が長い上、時差もあります。また、ほとんどの選手は3~5試合は自宅に帰らず転戦します。また最近は、金融危機の影響から米国内で試合をするスポンサーの数が減り、南米、欧州、アジアにまたがる海外での共催試合が11にも上ります。米国内でほとんどの試合が行われていた当時と比べたら、子どもを伴っての移動も熟慮しなくてはならない状況かもしれません。

一方、日本ツアーでは結婚して子どもができてからもツアーを続ける選手は非常に少ないです。米ツアーのように託児所があるわけでもないので、自分でその手配をしなければなりません。したがって、たいがいは自分のご両親の助けを借りてツアーを続けているようです。日本は米国と違って毎週自宅に帰ることのできる距離での試合ではありますが、ツアーに同行してもらうたびに宿泊費や交通費、食費などの経費も増えてきます。
 世間を見渡すと、最近、社内保育所が増えてきたとの報道もあり、米ツアーと同じで、その会社の働くニーズに合ったやり方なのだと思います。また核家族が増え、働く女性も多い中、男性の育児休暇を採用するところもあります。しかし、社会全体では待機児童が多く、なかなか預け先が見つからず困っている方が多いとも聞きます。人の生き方や働き方が多様化している今、託児所も多様化しなくてはならないのかもしれません。

プロゴルファー/小林浩美(こばやし・ひろみ)
1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)理事。TV解説やコースセッティングなど、幅広く活躍中。所属/日立グループ。
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