川内原発の火山審査に専門家から疑義噴出 審査「合格」の根拠崩れた形に

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東大地震研の中田氏(中央)は「噴火の予測はきわめて困難」ど断言した

東京大学地震研究所の中田節也教授は、「巨大噴火の時期や規模を予測することは、現在の火山学では極めて困難、無理である」と、予知は可能とする九電、規制委の認識を根本的に否定した。

規制委は、昨年6月に自らが作成した「原子力発電所の火山影響評価ガイド」(以下、火山ガイド)を用いて、火山審査を行っている。その火山ガイドでは、火山性地震や地殻変動、火山ガスなどを監視することでモニタリングを行い、火山活動の兆候を把握した場合、原子炉の停止、適切な核燃料の搬出などを実施するとし、事業者にその対処方針を定めることを求めている(九電の対処方針は未定)。

中田氏は、「火山ガイドでは異常を検知するとしているが、異常があっても噴火しない例や、ずっとタイムラグを置いて噴火する例もあり、異常を検知するバックグラウンドの理解が非常に不足している」と述べ、火山ガイドの前提自体に疑問を表明した。前兆現象を把握したとしても、数カ月後など短期で噴火するケースもあり、核燃料の冷却・搬出に必要な数年~10年程度より前にわかるとは限らないと指摘した。

真に兆候が出たら「異常あり」といえるか

同様に、防災科学技術研究所の棚田俊収・総括主任研究員は、「事業主(電力会社)が巨大噴火モニタリングと評価システムから、『異常なし』と判断した時、われわれ火山学者は、その判定を科学的に検証するだけの実力を持ち合わせているのだろうか。巨大噴火に至らない兆候が繰り返し観測され、何度も異常なしと判断が続いた時、真の兆候が出てきた時に、『異常あり』と、事業主はタイミング良く発表できるのだろうか」と、火山モニタリングの実効性に懸念を示した。

第1回の会合では、こうした専門家の意見に対し、議長を務める島崎邦彦・委員長代理や規制委事務局の規制庁サイドから、特に反論はなかった。噴火の兆候を把握した場合の九電の対処方針について、規制庁の桜田道夫・原子力規制部長は、「今後審査していく保安規定(認可申請)の中で具体的に九電側から示されることになろう」と説明した。そもそも、こうした重要な問題を議論することなく、基本方針としての設置変更許可申請を了承し、パブリックコメントに付すということ自体、妥当性が疑われる問題だ。

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