「こだま」が占う、東海道新幹線の未来像 東京-新大阪「グリーン9500円」の深謀遠慮

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正直に言って、JR東海は、今までこうした大幅割引の商品には積極的ではないイメージがあった。東海道新幹線を利用できる割引きっぷは少なく、安く乗る方法はツアーを除けば回数券かエクスプレス会員向けの割引くらいしかなかった。

そんな東海道新幹線だけに、「こだま」限定とはいえ、これだけ大幅割引の商品を長期間JR東海自身が販売するというのは、意外な印象を受ける。50周年の話題作りなら、「開業当時の値段」というわかりやすいセールスポイントを備えた「超★超IC早特」で十分なはずだ。

すべての駅に停車する「こだま」の魅力伝える

なぜ、「こだま」なのか--。この疑問に対し、JR東海営業本部販売促進グループリーダーの竹内謙太郎氏は「『のぞみ』だけではなく、いろいろな形の新幹線の旅を提案したいと考えた」と語る。

「『こだま』は17の駅すべてに停車し、多くのお客様がご利用できる。『こだま』を通じて、沿線各駅の魅力をもう一度伝えたいというのがコンセプト」(竹内氏)。

「のぞみ」は停車駅が決まっており、どんなに話題性のあるキャンペーンを行っても、恩恵を受けるのは東京、名古屋、大阪など大都市の人々に限られてしまう。全駅に停車する「こだま」を媒体としたキャンペーンを行えば、普段注目されにくい駅についても、その魅力を伝えることができる。格安の「こだま☆楽旅IC早得」を何度も利用してもらい、さまざまな駅を訪ね、新幹線沿線の魅力を再発見してもらう。そのために、1年近くにわたる長期販売商品とした。

16両編成中10両が自由席。13〜15号車が自由席なのは「こだま」だけで、余裕をもって座れることが多い

各駅停車の「こだま」には、独特の旅情がある。「ひかり」や「のぞみ」に比べると座席に余裕があり、自由席主体なので好みの席に座れることが多い。

車内販売は乗務していないが、多くの駅で通過待ちを行うため、3〜5分の停車時間があり、ホームを散策して売店で駅弁やその土地の名産品を買う楽しみもある。

富士山や浜名湖といった車窓風景も存分に楽しめるなど、かつての長距離普通列車のような「汽車旅」の魅力が詰まっているのである。「こだま☆楽旅IC早得」は、そうした「こだま」特有の旅情を、JR自身が積極的に売り出した商品と言うことができる。

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