高田明の声はなぜ高い?本人が教える話術の秘密 ジャパネット創業者「うまさだけではダメ」

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──社員には商品の提案方法をどのように伝えていますか。

とにかく自分で商品を手に取って、できるだけ触って使ってみたら。すると、何がポイントなのかが実感できるよ、と。インプットの量と質によって、アウトプットの精度が変わってくるのだ。

もう1つ大事なのは、何を利点として伝えるかである。その商品がお客様の生活にどんな変化をもたらすのか、より具体的に伝えなければならない。仮に衝動買いであっても、値段以上の価値を感じたら、お客様は固定化していく。

自分たちが伝えているもの、売っているものは最高のものであると信じて提案している。だから、ジャパネットでは商品選択が非常に重要なテーマなのである。売れば利益が出るとわかっていても、売りたくない商品は売らない。

スマートフォンでも、LINEの機能があればいい、インターネット検索、天気予報があればいいという人もいる。お客様にとって情報は100も200も必要ではないので、生活の中の重要なシーンで役立つ情報を選択して提案する。それにはインプットの量と質が大いに関わってくる。

通販の本質は「いかに優しい言葉として伝えるか」

──具体的なテクニックは?

最優先すべきなのは、わかりやすく伝えること。難しい言葉をわかりやすく言い換えて、初めて相手から共感を得られる。マスを相手にする場合はとくにそう感じる。

作家の井上ひさしさんがテレビで「先生はどんな気持ちで小説を書いていらっしゃいますか?」と聞かれたとき、「難しいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことをゆかいに、ゆかいなことをまじめに」と答えていた。通販の本質も同じであり、いかにやさしい言葉として伝えていくかだ。

あとは声のトーンは高いほうがいい。「Yes, we can change」を連呼したオバマ元米大統領のように繰り返すことも大事だ。さらに間を取って話す。同じトーンで10分間、話を続けても相手には何も残らない。しゃべったときに3秒、5秒の間を置いて、相手に考える時間を与える。この間は「次の有を生み出す無」ということになる。

「〇〇はこういう商品です。値段は2万9800円」。数秒置いて、「安いと思いませんか!」。次の瞬間、視聴者は「あ、確かに言われてみたら本当に安いわ」と感じるはずだ。すかさず「フリーダイヤル〇〇〇番!」。この流れで売り上げはまるで違ってくる。

でも、私の話し方は本当に我流。跡を継いだMC(司会者)は十数人いるが、話し方の教育をしたことは、ほとんどない。私を見て感じたことを彼らなりに学んで、表現してくれている。

誠実さや謙虚さはつねに持っていてほしい。番組では8~9割は価格や機能について話していると思われがちだが、本当はその商品のどういう部分がお客様を楽にしたり幸せにしたりするかという話が大半だ。それを誠実かつ謙虚に伝えることを忘れてはいけない。

「カメラはその人の歴史を、家族の歴史を残していくんです。だから使っていない人は、自分の今生きている瞬間を本当にどこかに置き忘れていますよ」と言えば、やっぱり使ってみようかなと思っていただけるのだ。

堀川 美行 東洋経済 記者

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ほりかわ よしゆき / Yoshiyuki Horikawa

『週刊東洋経済』副編集長

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