日銀の出口戦略はどうなるのか 黒田総裁が考えている、「本当の戦略」とは?

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しかし、この期落ち戦略が中心的な出口戦略になるということは、われわれのイメージする戦略とは大きく異なり、日銀は動かない、売買をしない、ということで保有国債量を減らしていくことになるのである。だから、戦略なのだが、期落ち戦略では、あまり戦略とは呼べず、戦略的に動くこともなく、ひたすら洪水の水が引いていくのを待つしかないのであり、それは戦略とは言えないだろう。

期落ちという「出口戦略」の限界

これが、日銀の過去からの経験である。過去、量的緩和から出たときには、この期落ちを中心に行なったのだ。そして、もっとも前回と違うのは、前回の量的緩和は短期国債であったから、期落ちで十分であったのであるが、今回は長期国債であり、残存期間の平均は7年であり、期落ちだけに頼っていては、7年以上かかってしまうということだ。だから、白川日銀のときには、年限を長期化することに抵抗したのであり、長期国債、ましてや超長期債と呼ばれる10年長の国債、30年国債などを買い入れることは、異常なことだと思われていたのである。

実際、米国FRBの出口戦略が難しいのは、米国に置いては、30年債のウェイトが高いことであり、しかも、国債だけでなく超長期のMBSを大量に保有していることである。だから、日銀よりもむしろ米国FRBの方が出口は難しいのだ。

しかし、そうはいっても期落ちだけを待っていては、時間がかかりすぎ、出口を出きってしまう前に、景気が悪くなってしまい、次の緩和局面が来てしまい、出られないのではないか、という意見がある。これは全くその通りで、超長期債は根雪のようになり、中央銀行の資産は静かに、増減を繰り返しながら、超長期的に膨らんでいってしまうだろう。

そして、日本においては、米国よりも恐ろしいことは、これまでの物価水準が低いものであっただけに、いったん上がり始めたら、そのインパクトが衝撃的過ぎて、日銀が名目金利を制御不能になってしまうのではないか、という懸念だ。すなわち、0.5%から2%への10年もの国債の名目金利の上昇は、幅で言えば、高々1.5%であるが、4倍なのであり、金融市場へのインパクトは、すべて利ざやなど差で処理できるとしても、政府財政へのインパクト、利子支払額は4倍増になるので、壮絶なインパクトがある。

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