日本人がわかっていない「音声市場」本当の凄み GAFAやマイクロソフトも覇権争いに血眼

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究極的な話、最後の最後は人間スッポンポンで何もしなくてもすべてうまくいく、そんな世界に寄っていくんだと思う。今日の天気など考えなくて済み、エアコンなんてつけなくてもよく、そういう世界でふと「お母さんにありがとうって言いたいな」と思ったら、その場でお母さんにありがとうって言える、そういう世界になるんだと思う。ボイステックが実現していくことは、それに向かって一歩進むということだと思います。

ベンチャーが大きくなれない日本の投資風土

──ただ、日本はボイステック市場で出遅れている。要因の1つとして、緒方さんは日本の投資風土を指摘されていますね。

失敗を恐れ安全性最優先、最終的なリターンの大きさより、少額でもすぐ売り上げが立つ企業にしか出資しない。ボイステックで世界を目指すベンチャーに投資がいかないのはつらい状況です。金融機関は、社会の大きな礎を築きたいとは別に思ってないので。アメリカには引退した経営者が次の人に投資をする風土がある。でも日本では成功者が第一線にとどまったまま、次の人に投資する立場に回らない。スマホで遅れ次のボイステックでも遅れ、国際競争でどんどん地位を下げていくとしたら、本当に苦々しいことですよね。

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新興企業市場マザーズも有望なベンチャー育成には不向き。時価総額100億円いかない小粒でも簡単に上場できてしまい、投資家はそこで回収できるからOK。いくら創業者が膨大な時間をかけデカい夢を描いても、目線の低い投資家たちはそれに付き合わない。

──日本企業はどう戦っていけば。

僕自身はボイシーを、日本でいちばん面白い音声コンテンツが集まる場所にしたい、それで勝っていこうと思っている。日本の産業界としてはインフラの世界に入っていくことだと思います。医療や介護、建設土木、工場現場などで記録や書類作成に音声の活用が始まりました。まず業務効率向上への対応で市場の拡大が望めます。日本の先進的技術を持つ大企業は、いち早くボイステックに着目した新産業・市場に参入してほしい。他社と横並びで、同程度の資本を投入し、よーいドンで勝とうと思ったら、それは難しい。

──実際の動きはどうですか?

その動きがめちゃめちゃ遅いから、僕はこの本を書いたんです。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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