ウッドショック、住宅木材価格「平時の4倍」の激震 中小工務店の資金繰りが逼迫、影響の長期化も

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同じく木材の使用量が多い分譲戸建てを主力とするビルダーのうち、北関東を地盤とするケイアイスター不動産は12月末までの住宅販売計画分の木材確保は完了しているとしたうえで、「来年1月以降のことは何とも言えないが、ワクチン接種が広がる中で、国内外とも巣ごもり需要による住宅ブームは落ち着いてくる」(同社幹部)と説明する。

分譲住宅最大手の飯田グループホールディングスは「市場の動向を注意深く見守っている」(同社幹部)と静観の構えだ。

住宅価格への影響はわずか?

だが、あるハウスメーカーの関係者は「『影響は限定的』と言っておかないと、建材業者から足元を見られて価格をつり上げられる。逆に『影響なし』と強調すると、『余裕があるなら木材を融通しない』と言われかねない。本当に難しい交渉になっている」と本音を漏らす。

では、住宅を購入する側への影響はどれほどなのか。現在、高騰しているのは梁や柱に使う集成材で、国内では梁は9割、柱は6割を輸入材に頼っている。だが、そうした構造材は家全体の原価の3~4%にすぎない。あるハウスメーカー幹部は、「仮に集成材などの調達価格が1.5倍になっても、1棟あたりの販売価格の上昇は20万円程度」と話す。

例えば、都心部で狭小戸建て住宅を手掛けるオープンハウスが5月に公表した資料では、同社の平均的な販売価格4400万円の住宅のうち、「(ウッドショックによる影響額は)金額にして36万円」と説明している。

一方、アパート建築最大手の大東建託では、カナダ産のランバー材が高騰し、2022年3月期はコストが約60億円上昇。完成工事の利益率を1.5ポイント押し下げる要因になるという。同社の小林克満社長は「ウッドショックを避けることはできない。木材価格の状況、為替の状況に鑑みて早め早めに対応する」と強調した。

住宅設備最大手のLIXILはウッドショックによる新築需要の減少を懸念するが、瀬戸欣哉CEOは「(新築の供給が減っても)中古住宅を買う選択肢は当然、考えられる。中古住宅をリフォームすることになると、水まわりだけではなく、外壁なども重要になってくる」と述べ、リフォーム需要に期待を寄せる。

前出のIG証券・山口氏は「1990年代、あるいは2008年のリーマンショック直前に起きたウッドショックの際は1年半から2年ほど続いた。今回のアメリカ市場での木材高騰はまもなく1年になるが、あと数カ月は高値圏が続いてもおかしくない」と予想する。

プレカットメーカーからは「7月から需給は改善されていくが、価格は年内は高値が続きそうだ」との見方も出ている。2022年の春ごろまで、国内でウッドショックの余波が続くことになりそうだ。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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