アース製薬「殺虫剤をやめてもいい」宣言の真意 除菌剤にも注力、「感染症総合ケア会社」目指す

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殺虫剤の最大カテゴリーであるハエと蚊の活動は気温に左右される。ヤブ蚊は気温が25~26度になると活動が活性化するが、30度を超えると吸血意欲が低下するという。

35度を超える猛暑日が続いた2018年は蚊の活動が鈍り、アース製薬の2018年12月期の虫ケア用品部門売上高は前期比5%減となった。

近年は台風が日本に上陸することが増えた。2011〜2020年に日本に上陸した台風の数は35個。10年単位で見ると1950年代以降では最多となった。「激しい雨風により、一時的に害虫が吹き飛ばされたり、流されたりする」(アース製薬)ため、台風上陸は殺虫剤の売り上げにとってマイナス要因になる。

人気の「虫よけ」に異業種が参入

構造変化の2つ目は、売れ筋商品の変化に伴う競争激化だ。虫ケア用品といえば、以前は虫に薬剤を直接吹きかけて殺すスプレータイプが中心だった。現在は、「虫を見たくもない」というニーズが増えたこともあり、虫よけタイプが人気になっている。

アース製薬の川端社長は、感染症トータルケアカンパニーを目指すと語る(撮影:梅谷秀司)

市場調査会社であるインテージのデータを見ると、虫よけを含む「空間・対物用」殺虫剤の2020年の売上高は前年比で2割以上増えた。これはスプレータイプなど「直接用」の伸び率の2倍近い。

市場拡大が続く虫よけには、「金鳥」で有名な大日本除虫菊やフマキラーといった従来のライバルとは違う異業種が参入してきている。日用品大手の花王は、潤滑油として用いられるシリコーンオイルを肌に塗ると、蚊が肌に着地しにくくなることを発見、製品化を目指している。電機大手のシャープは蚊取りもできる空気清浄機を販売した。

市場環境は厳しさを増していることから、川端社長は「これからは実力があるところだけが残っていくだろう」と気を引き締める。

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