なぜ人口を安定させることが必要なのか 増え続けることも減り続けることも問題

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そもそも人口減少が止まる水準にまで子供の数を増やすのは非常にハードルが高いうえに、効果が出るまでには長い年月を要する。人口減少を止めることは人口構造のゆがみで生じる後世代の負担を軽減する正道なのだが、人口減少が止まるまでの過程では、むしろ社会の負担が大きくなるというジレンマがある。

出生率が高まると社会の負担は大きくなる

生産年齢人口に対する15歳未満の年少人口と65歳以上の老年人口の比である従属人口指数は働く世代の負担を示す指標だ。日本の従属人口指数は、かつては低下傾向にあって1992年には43.3にまで低下したが、高齢者の傾向的な増加と1995年をピークに生産年齢人口が減少を始めたことで上昇に転じ、2013年には61.1に達した。

生産年齢人口に対する年少人口の比率である年少人口指数は歴史的な低水準にあるが、子供の数が増えると上昇して従属人口指数をさらに押し上げることになる。

「将来推計人口」では、将来の出生率が標準的な予測(中位)より高めに推移するケース(高位)と低めに推移するケース(低位)の予測がある。これを比較してみると、2040年代半ば頃までの間は、出生率が高めに推移するほうが従属人口指数は高くなっている(右図)。

日本で若年向けの公的支出が少ないのは、制度が貧弱だということもあるが、そもそも対象となる若年の人口が少ないことも大きな原因だ。小中高校や大学教育なども子供の数が多ければ多いだけ支出が必要になるから、人口の安定を実現するまでの間は、むしろ負担を高めてしまう。

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