「ロマンスカーミュージアム」実物11両の本気度 「秘蔵」の歴代特急車両5車種を初の常設展示

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展示車両は、車体から床下の台車や機器類に至るまでぴかぴかの状態だ。高橋館長によると、展示にあたっては登場時の姿を意識してすべて新たに塗装を施したほか、SEは外板が傷んでいる部分も多かったため、パテなども一度落として徹底的に補修したという。修復した車両は約3カ月をかけて建物内に搬入した。

これまで常設展示施設のなかった小田急だが、引退車両の保存については長い歴史がある。SEが引退したのは今から約30年前の1992年。同車両については海老名に専用の設備を設けて保存し、その後に引退したロマンスカーや通勤車両も車庫内などで保管してきた。

海老名へのミュージアム建設を発表したのは、小田急の長年の悲願だった複々線化完成直後の2018年4月。計画自体は2011年ごろから検討していたというが、CSR・広報部の山口淳部長(取材時)は、「いつかこういった施設ができないかという考えはそれよりも前からあり、車両を保存し続けてきたのも歴代の経営陣がそういう気持ちを持っていたからだろう。その『いつか』がついに実現したという形」と話す。

今後の展開は…?

ファン待望であるだけでなく、小田急にとっても念願だったといえるロマンスカーミュージアム。新型コロナ感染対策として開館から当面の間は事前予約制となるが、今後のイベントなどの展開にも期待が集まる。

ロマンスカーLSEは高橋孝夫館長にとってとくに思い入れが深い車両という(記者撮影)

高橋館長は「まだ企画段階だが、館内で定期的に行うイベントや、ミュージアムに来ていただくだけでなく、『外』に出ていく(ツアーなどのような)イベントなども考えていきたい」。ロマンスカーの特徴である2階の運転台公開なども「いずれはあるかもしれないですね」と話す。

ミュージアムに並ぶ歴代のロマンスカーは、すべて床面に敷かれた線路の上に停めてある形だ。今後さらに車両が加わることも、「決まっているものはないが、可能性としてはある」(山口氏)。ただ、別の場所で保管しているロマンスカー以外の退役車両については今のところ、具体的なお披露目の計画はないという。

私鉄特急列車の代表的存在であり、小田急の象徴である「ロマンスカー」の名を冠したミュージアム。歴史的車両の保存の場として、そして新たなファンを増やすという期待も乗せて、4月19日に「出発」する。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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