ミクシィ朝倉氏、「龍馬的な遊撃軍」を目指す 今の関心は「ハードウェア」と「組織マネジメント」

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朝倉 自治体にしても、そういうふうに自分たちで一生懸命自立しようとしているところはワークするということですよ。

ただ、これって、殴り合いなんですよね。島の外から人を呼ぶということは、その人が前に住んでいた地域では人が減るということですから。

塩野 ゼロサムゲームですね。

朝倉 ゼロサムゲームなんだから、均衡に発展していきましょうというマクロ的なアプローチは逆行しているんじゃないかと思う。さっき共産主義みたいだといったのは、このことです。語弊があるかもしれませんが、公的組織も私的組織も、あらゆる組織には、救うべきものと、そうでないものがあると思う。

塩野 それは市場原理として?

朝倉 市場原理で淘汰されざるを得ない面があると思いますし、そうした流れに対して無理に抗するべきではないと思います。たとえば企業なら、公的機関のサポートで延命することがありますが、なかには救うべきでないところもきっとあると思うんです。なんとか延命させたいという、所属している個々人の気持ちもわかるけれど、それは自然の摂理に逆行することだと思いますね。

塩野 大企業が公的資金などで延命された例はたくさんありますし、中小企業でも常に赤字にしておけば税金を払わずに済んだりする。また、ローカルな中小企業とグローバル企業とではだいぶ様相が違いますよね。

朝倉 終わるということを日本人はネガティブにとらえますが、終わっても全く問題ないと思うんですよ。新しいニーズはいくらでもあるわけだから。

東インド会社が好き。

塩野 新陳代謝ですよね。

朝倉 僕が株式会社のあり方としていちばん好きなのは、東インド会社なんですよね。「インドに行って胡椒を取ってきたい。儲かったら分配するから資金を出してくれない? でもひょっとしたら途中で海賊に船を沈められるかもしれないから、そのときはごめんね」って、すごく合目的的だなという気がする。無事帰ってきたら2回めの航海もあるかもしれないし、そのときは1回めと同じ人からお金を集めるかもしれないし、違う人からかもしれない。これはすごく割り切っていて気持ちがいい。いまこの形態と一番近いのはファンドだと思います。

塩野:そうですね。株式会社は目的地に向かうためのビークル(乗り物)にすぎないのに、いつの間にかみんな会社を愛し始めたり、ボロ船なのに、「ここにいさせてください」と言い始めたりする。

朝倉 「ゴーイングコンサーン」って幻想ですよね。会社は潰れるときは潰れる。法人という人自体は現実には存在しないのに、そこに実体をもたせようとするのは資本家や経営者に都合の良いレトリックです。働く側がそれを信じこむ必要はないし、オーナー側も何がなんでも企業を存続させる必要はない。この変化の激しい世界において、株式会社という形態が本当に正しいのかどうか、かなり疑問です。もっとプロジェクトごとに集まって、「終わったら解散!」みたいな、映画の製作委員会のような働き方ができないものかと思いますね。

上場企業はゴーイングコンサーンを前提とするから勝手に解散できない。となれば、上場企業の経営は、自治体の運営に似てきます。つまり組織の存続自体が目的になってしまう。

塩野 それはどこの会社でもありますね。

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