今の日本人は、本当に教養がないのか?

三井物産・槍田会長×ライフネット生命・出口会長(1)

 世の中には、論理的思考やMBAに関するビジネス本があふれている。そうした知識も重要だが、文学、哲学、歴史といった「教養」を抜きにしては、真の一流になることはできない。また、世界を舞台にビジネスをする上でも、「教養」は不可欠になる。そこで、ビジネス界きっての教養人として、経営の最前線で活躍する三井物産の槍田松瑩会長とライフネット生命の出口治明会長兼CEOに、一流の仕事人に必要とされる「教養」について、語ってもらった。

教養とスキルは違う

――教養という言葉の定義は人によって違うと思いますが、おふたりは教養という言葉を聞いたとき、どのようなことを思い浮かべますか。独自の定義を教えてください。

槍田:教養とは、「人間という生き物はいったい何なんだろう」とか、「自分とは何なのかな」と考えるときのベースになるものではないかと思います。

われわれは気がついたらオギャーと生まれていて、生まれた以上は寿命が尽きるまで生きなければならない。どっちみち生きるなら、自分の納得のいくような、意味のある生き方をしたいと思う。そのためにはどうすればいいかを考えるときの、糧になるものが教養ではないかという気がします。

出口:僕も槍田さんとほとんど同じ意見です。人間はひとりでは生きられない動物ですから、人間と人間がつくる社会を相手に生きていくしかない。ということは、「人間とはどういう生き物なのか」とか、「人間がつくる社会とはどういうものか」ということをわかっていたほうが生きやすい。槍田さんが「ベース」とおっしゃいましたが、まさにそのとおりだと思います。

それから世の中には楽しいこともたくさんありますから、同じ人生なら楽しいことも経験したい。でも何かを楽しもうと思ったら最低限の知識が必要です。たとえばスキーを楽しもうと思ったら、スキーを習わなければいけない。

人生を楽しんだり、あるいはなぜ働くのだろうということを考えたりするためにも、ベースとなる知識や技術が不可欠で、それを古くは「リベラル・アーツ」と呼んだのではないかと思います。

――おふたりは教養というものが、戦後の日本ではあまり重視されず、衰えてしまったという印象を持っていますか。

槍田:僕はあまりそういう感じは受けませんね。ただ最近、世の中がグローバル化していて、教養という言葉の意味するものが、西洋文化に通暁していることと同義語になっているかもしれません。そうだとすると確かに日本人には、英語圏の文化に対して劣位な感じがあります。

でもそれは教養とは違うのではないかと思います。英語などは単にスキルであって、やっぱり日本人はとうとうと流れる東洋文化をベースとした、しっかりした心構えや価値観を持っていますよ。

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