ギリシャ戦、ザック采配がことごとく裏目に 守り倒す相手から点が取れない課題を露呈した日本

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ザッケローニ監督には、推進力の高い岡崎を左サイドに起用することで、高い位置を取るギリシャの右サイドバック、トロシディス(ローマ)の背後を突いてほしいという意図があったようだ。岡崎はそれを実践しようとしたが、相手を背負ってボールをもらう場面が目立ち、得意の裏への飛び出しがあまり出せない。

長友がタテに抜けるスペースは作ったものの、その長友も香川とタテ関係を形成する時のようなスムーズな動きは見せられなかった。右の大久保嘉人(川崎)にしても「バイタルエリアが空いていて、そこにボールを出してくれるように言っても出てこなかった」と周囲との意思疎通の不足を嘆いており、攻撃陣のコンビネーションの難しさを感じさせた。

後半に香川が入ってから、ザック監督が岡崎を1トップに上げたのも予想外だった。今季ブンデスリーガで15得点を挙げ、最も好調な男にフィニッシュの部分を託そうとしたのかもしれないが、相手がベタ引きの中でシンプルなクロスを上げられても岡崎は勝ちきれない。

本人も久しぶりの日本代表での最前線に戸惑いを覚えたことだろう。そんな手詰まり感の強い時間帯こそ、ミドルシュートやドリブル突破からの打開など工夫が必要なのだが、遠目からのシュートの意欲を見せたのは大久保くらい。日本の攻撃は11対11の数的同数だった時以上に沈黙。引かれた相手に攻めあぐねるその姿は、2013年6月のアジア最終予選・オーストラリア戦(埼玉)、あるいは10月のセルビア(ノヴィサド)・ベラルーシ(ジョジナ)2連戦の再現を見ているようだった。

チームコンセプトを無視した策

さらに不可解だったのが、吉田麻也(サウサンプトン)を早い時間帯から前線に上げてパワープレーに出たこと。これはコートジボワール戦に続いて今大会2度目だが、この4年間通して全くやったことがない。指揮官はこのチームは高さでは勝てないと判断し、スピードや運動量に長けた大久保や斎藤学(横浜)、清武弘嗣(ニュルンベルク)のような俊敏なタイプをメンバーに入れたはずだったが、そんな攻撃に打って出るなら、最初から豊田陽平(鳥栖)やハーフナー・マイク(フィテッセ)を入れておくべき。チームコンセプトを無視した策といっても過言ではないだろう。

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