東大卒プロポーカーが説く、データの使い方 ポーカープレーヤー 木原直哉氏のデータ分析論

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 データはどのように活用すれば「儲かる」、つまりはビジネスとして成果を生み出すのか?
 クラウド型の統計分析ツールを提供する株式会社サイカの平尾喜昭と山田裕嗣が、さまざまなデータを活用するプロフェッショナルへのインタビューを通じて、その「可能性」や「限界」はどこにあるのかを探っていく。
 今回はプロのポーカープレーヤーとして活躍する木原直哉氏にお話を伺う。ポーカーのプロから見たビジネスにおけるデータの活用の仕方、限界、可能性とは。

 ポーカーとデータの関係

――ポーカーにはいろいろなゲームがありますが、「データを活用する」という観点では、どのゲームについて話すのがわかりやすいですか?

テキサスホールデムというゲームがわかりやすいと思います。このゲームは、2枚の手札と5枚の共通カードでいちばん強い手を作ります。初めに手札が2枚ずつ配られて、まずその時点でベットします。次に共通カードが3枚開いてベットして、4枚目が開いてベットして、5枚目が開いて最後のベットします。

多くの場合は9人でプレーするので、チップが取れるのは単純計算で9回に1回(約11%)になります。どの時点で勝負から降りてもいいのですが、標準的に初めの2枚の手札の時点で8割は捨てます。9回のうち2回参加して、そのうち2分の1の50%でチップを取れる、というくらいが標準的なプレースタイルです。

固いプレースタイルだと、初めの手札2枚が強い1割のときしか参加しません。チップも減らない、ただし勝てる絶対数も少ない。逆に緩いスタイルだと4割参加する人もいます。そういう人は確率的には9分の1以上勝てるけど、弱い手でも参加しないといけないからブラフも多く、振れ幅が大きい。

どういうスタイルでプレーするかは、状況によって変えます。初めの2人(スモールブラインドとビッグブラインドと呼ばれる)は決まった額を必ずベットするというルールがあります。固いプレーヤーばかりのテーブルだと、自分がいっぱい参加して最初の2人のベットを多く取って得をするし、緩いプレーヤーばかりなら周りよりちょっと固くして、相対的にいい手で大きく勝つことを狙います。

――プレーしている中では、データはどのように活用していますか?

プロ同士の場合だと、オンラインポーカーで対戦したときの過去のデータを持っています。そこでこの人は何%くらい参加している、というのを確認できます。

リアルなゲームでも、その場でもある程度データを取れます。たとえば2時間で60ハンドくらいをプレーしますが、そのうち12回参加すると2割くらいの参加率です。実際に12回なのか16回なのか正確には数えてはいませんが、そこは誤差の範囲ですよね。12回と30回なら違いますが。

プレー中は相手を観察して、何%くらい参加しているか、ブラフは何回中何回かな、とかを見積もっています。そのうえで、自分が参加率15%くらいと予測したプレーヤーがハンドをショーダウンする、要は見せるときに、そのハンドが自分の予測範囲にあるのかどうかを見ます。そうやって少ない試行回数の中ですが、自分が予測した仮説が当たってるかを検証していきます。

そうやってデータを使って判断できるようになるためには、数をこなして、後は慣れていくこと。そこまでいくのはそれほど難しくないと思います。もちろん、漠然と数をこなすのではなく、しっかり考えなければいけませんが。

面白いのは、互いに1万ハンドのデータを持っている相手がいたとすると、自分は相手のデータを参考にしますが、相手ももちろんそれを知っている。そうすると、ほかの人に対してはいつもどおりプレーするが、自分に対してだけはデータどおりにプレーしてこない。それは向こうも知恵を絞ってこっちに勝とうとしてくるわけで、そうするとポーカーは複雑なゲームになってきます。

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