東大卒プロポーカープレイヤーの勝負哲学

日本人初のタイトル保持者が戦いのすべてを語る

東大卒業後、知と知がぶつかる「頭脳ゲーム」の世界に飛び込み、2012年の第42回世界ポーカー選手権大会(WSOP)では、トーナメント「ポット・リミット・オマハ・シックス・ハンデッド」にて日本人初の世界タイトルを獲得した木原直哉氏。現在は世界最大のオンラインポーカーサイト「ポーカースターズ」の専属プロとして活動中の彼に、たゆまぬ努力の末に生み出された戦略から、大会中の心理状況まで、戦いのすべてを訊いた。(取材・構成:木村俊介)

「不完全情報ゲーム」とは

ぼくはいま、プロのポーカープレイヤーとして活動していますが、ポーカーが自分の専門であるという感覚をもつようになったのはごく最近のことなんです。ポーカーのルールを覚えたのは2007年で、本格的にやり始めたのはその翌年。高校、大学と将棋部に在籍し、大学で麻雀とバックギャモンを知り、それからしばらくしてポーカーを覚えたという感じです。

将棋、麻雀、バックギャモン、ポーカーという4つのゲームについては、テレビゲームに夢中な子供のように楽しくてのめり込んでいるだけで、どれが一番楽しいということはありません。だから今後、ポーカーのみをやり続けると決めたわけでもないんですね。好きな4つのなかで、たまたま生計を立てているのがポーカーで。そこはもう単純に「お金になるから」「勝てるから」という理由だけです。

将棋、バックギャモンは盤面にすべての情報が開示されている「完全情報ゲーム」です。一方、ポーカー、麻雀は重要な情報が隠されていて運の要素も絡んでくる「不完全情報ゲーム」。ぼくはどうやら、ある事象がどれくらいの確率で起きるのか感覚的に理解しやすい性質があるようです。そのため、確率の絡むゲームに適性があって、さらに、相手の考えを読み取ることが比較的得意なため、お互いの手の内が見えない「不完全情報ゲーム」にも向いている。

これは実社会のビジネスにも近い感覚なんです。実業界では大人になってビジネスを始めても、世界の頂点に行ける可能性がある。それは先の見えない、不確定な偶然が結果を左右するからではないでしょうか。

「完全情報ゲーム」は受験勉強やスポーツに近い訓練が要ります。目に見えている局面を読めればいいのだから、小さいころから訓練を積み重ねているほうが断然有利です。ぼくは将棋もかなりやり込みましたが、プロとやれば「短距離でボルトには勝てない」のと同じほど、ぼくの能力ではもうはっきり「頂点に行けない」とわかるんです。しかし、ポーカーのような「不完全情報ゲーム」は大人になってから始めても、頂点のプレイヤーに追いつきやすいところはあります。

それが、比較的最近になってやり始めたぼくも、2012年に世界タイトル(WSOPのトーナメントの1つで優勝)を獲れた理由といえるかもしれません。ただ、自分の能力を出せる分野で過ごす時間が次第に増え、まだポーカーの方法論も確定していないからもっと強くなれるという期待がある一方で、今後もし向いているとわかれば、ビジネスの世界への転身も辞さないと思っているぐらいなんです。

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