中国が北朝鮮向け原油を止めていない理由 技術的にも政策的もパイプラインによる輸出停止は不可能

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「中国は北朝鮮向けの原油輸出を止めている」。このような観測がこの1、2カ月、韓国や日本を中心に流れている。2013年末に中国通で北朝鮮権力のナンバー2とされていた国防委員会副委員長の張成沢氏が処刑されたことに中国が怒りを示し、そのために北朝鮮経済にとっての命綱であるパイプラインによる原油供給を止めているとの説が出ていた。

ところが、韓国の北朝鮮専門メディア『デイリーNK』は韓国語版、英語版で「中国は地下送油管からひと月に数回、原油支援を続けている」ことを確認したと報道。結局、中国は北朝鮮への支援を止めていないと改めて指摘している。

『デイリーNK』は5月上旬、北朝鮮と国境を接する中国・丹東市にある北朝鮮向け送油管加圧施設を取材。国境が走る鴨緑江の川岸にある同施設の入り口で警備担当者から「今でも継続して原油を送っている」との発言を得たという。

「パイプラインの停止はありえない」

北朝鮮経済に詳しい、環日本海経済研究所(新潟市)調査研究部の三村光弘部長は、「中朝間のパイプラインを止めるということは中朝関係の断絶を意味するので、止めることはあり得ない」と指摘。また、中朝間のパイプライン自体の現状から考えると老朽化などの問題で止めても数時間しか止められず、もし輸出が止まっているのであれば、技術面から見ても「パイプラインは使用不能になっているはず」と説明する。

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